狂科学者の御披露目ぱーてぃー(3)
自己紹介を必要最低限やりきったハルト。
変に噛んだりしないよう魔法生物で表情筋を操作し、無表情を保ちながらこれまた操作された肺と顎及び口の動きで話したため、本人何かをしたと言う感覚はないが。
口から設定した言葉が出ただけ、まさに人間スピーカーである。
「ね、ハル君? どう、綺麗?」
桃色のドレスを着たユアが近寄り、話しかけてくる。
改めて見てみると、軽くだが化粧をした我が幼馴染みは、生来の素材の良さも相まって......
そこでハッとした顔をするハルト。
「? どうしたの?」
私、綺麗じゃない?
と不安げに目で訴えてくるユアに苦笑するハルト。
「いや、自分の表現力の無さを再確認しただけだ。」
この美しさを表現する語彙が思い付かなかったのだ。
仕方ない、月並みだが......
「似合っているぞ。」
そう言えば、途端に機嫌が良くなるユア。
えへへーと僅かに口角を緩めながら腕を絡ませてくる。
「ハルトさん! 私も......」
「フィー、今は止めておけ。」
「何でですかお父様!?」
国王である父親に声を荒らげながら反発する王女。
いや、まあ。
この場で王女が傾想している相手だと紹介するようなものだしな。
出来るだけ穏やかにこのパーティーは終わらせたいのだ。
「......納得行きませんが......分かりました。」
似たようなことを言われたのだろう、渋々と離れ、兄である王子の側に立つ王女。
「えへへへ......。」
「むむむむむ......。」
笑顔で擦りついてくるユアと、頬を膨らませて不満げに睨む王女。
そしてユアが擦り付くハルトにやや腹立たしげな視線を向ける公爵。
恐らく初めて真正面で娘が想い人に甘えている光景を直視し、娘を盗られた気がしたのだろう。
そんなことをしている間に、何人かの貴族が近寄ってくるが、全て国王や王子が間に入って捌いてくれるので実質やることの無いハルト。
本日の目的が王家や公爵家との親密度をアピールすることなので仕方ない話だし、何もしたくないハルトにとってはありがたい話ではあるが......。
そんな状況に困惑する者も僅かに居る。
主にあまり情報を持っていなく、今回のパーティーで直接その人となりを探ろうとした者達だ。
本人へ近づこうにも、周囲が邪魔をして中々近寄れない。
普通新人貴族は周囲の貴族へ挨拶するし、それが慣習だ。
しかし、今回は違った。
ハルトは多くの大物貴族とは商売の関係上知り合い程度の仲だし、こと二術院においてはハルトが「先生」なのだ。
おまけに公爵家や王族とも太過ぎる程のパイプがある。
己を知らない中位の貴族のためにわざわざ挨拶回りする必要性が皆無だったのだ。
そんなわけで情報は自然と規制され、常識と憶測が入り交じる。
中位貴族はその立場上、付き合いが多い。
その結果伝言ゲームのごとく情報は変容し、評価は歪んでいく。
末端に行けば行くほど多様化していくそれはどこまで行くのか。
その時のハルトにはまだ、知る由はなかった。
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