狂科学者の御披露目ぱーてぃー(1)
「あ゛~。」
そんなおっさんくさい声をあげながらソファーへ崩れ落ちるハルト。
「......なっちまったな......」
貴族に。
死んで、
女神に会って、
能力もらって、
異世界に転生して、
なんだかんだ好きにやっていたら......貴族になってしまった。
それも最高位の。
「......何とまあ、空想的な響きだな。」
科学者として生き、死んだ前世の自分にとって、
何もかもが想定外。
魔法?
魔物?
女神?
魂?
異世界?
前世の俺が聞いたら「精神科......行くか? 知り合いに腕のいい奴がいるんだよ。紹介してやる。」と呆れ返って一笑に付してしまうだろう。
そんな現実。
「......何をごちゃごちゃ呻いている? 宴はもうすぐ始まるぞ?」
貴族のあれこれについてあまり知らない俺に、細々とした説明をする為付いてきたメルガルト公爵の声に現実逃避を止めるハルト。
渋々と言った顔で儀礼用の服を脱ぎ、一般的な礼服に着替える。
そして軽く髪を整え、立ち上がる。
それを見て、
「うむ、少しは貴族らしくなったではないか。」
―――あの時の少年が......わしも歳をとったものだ―――
そう呟き、何処か優しげな目でこちらを眺めてくる公爵。
「......何にせよ、無事準備も整った事だし、わしは行くとする。主役は遅れてやってくるのが通例だ。お主は呼ばれたら来るように。......道はわかっているな?」
随分と回りくどい慣習だ。
そう思いながらも、「わかっている。」と頷くハルト。
「......ハルト様、国王陛下がお呼びになっております。」
「わかった。」
ようやくか。
部屋を出ていく公爵を見送って数十分、
やっと呼ばれたハルトは椅子から腰を上げ、部屋を出て、豪華な城の廊下を歩む。
『今日の主役の登場だ。』
ホールの扉の前に辿り着けば、扉の向こうからそんな国王の声が聞こえる。
息を吸って、吐く。
心を無にして、メイドが開けた扉を潜る。
瞬間、むわっと感じるホールの熱気。
追撃とばかりに参加者達の纏う多種多様な香油や香水の香りが鼻に直撃する。
瞬時に嗅覚の感度を落とし、国王と公爵の居る方へと歩み寄る。
そこには王女とユアもドレスで着飾り、立っていた。
周囲を見回せば、学園で見覚えのある顔もちらほら。
そこで再度深く息を吸い、一言
「国王陛下よりご紹介に与った。ハルト・サイバストルだ。以後宜しく。」
そう、無表情な顔で言い切ったのであった。
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