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狂科学者はボッチだった


 「じゃ、今日は帰る。色々()()もしないといけないしな。」


 「......『準備』を強調しているようだが......本当に変なことをするなよ?」


 「さあな。」


 あれだけ謎の謀略に嵌めようとして来た奴が何か言っている。

 あれ以上のサプライズをどうやってしろと?

 

 俺ができるのは研究であって権謀術数ではない。

 できるとしても精々場を白けさせる爆弾として特攻する程度だ。

 宴会芸にすらならない。



 学生時代、真面目な返答を繰り返していたらいつの間にか周囲からハブられていた。

 理由は、『面白くない』

 面白くないといけないのか!?

 面白くない奴に人権はないと!?

 魔法のようにクラスメイト達が俺から離れていったのだ、あの頃は不思議でたまらなかった。

 まあ、元々本の虫みたいなものだったし、余り気にはならなかったが。

 



 ......それでも何らかのグループ活動で、班を決めるとき、

 ―――十六夜、お前はどこの班だ?――― 

 ―――......どこの班にも入れませんでした―――

 ―――仕方ない......おい田中! お前の班に入れてやれ!―――

 ―――うーっす―――


 とか言う一連の会話、あれはなかなか心に来るものがあった。

 嫌な思い出だ。




 

 おっと、思考が脱線していた。




 それにしても、

 「貴族か......。」


 不本意だが、俺も出世したものだ。



 「ま、どうにかなるだろう。」



 そう呟き、必要な準備のため城から出ようと歩みを再開するハルト。


 空を見上げれば、そこは晴れ渡り、雲一つない。


 中庭と面している広い廊下には日光が射し、庭の草花が心地よい香りの風をもたらす。




 「俺は死に、こうして今を生きている。」

 前世の十六夜春ではなく、大商会の嫡子、ハルトとして。


 あの時、女神に拾われたのは僥倖だった。

 この世に生まれ直し、機会を与えられた。


 

 ―――この世界が仮想現実である可能性は否定できない―――


 シミュレーション仮説とも呼ばれるそれは、否定できない。

 神が存在するのだとすれば尚更。

 人が世界に生きる存在であるがゆえに、その世界の真偽を確認することは非常に困難だ。

 もしかしたら女神から見ればこの俺も人格データのひとつで、箱庭に生きる資源なのかもしれない。

 彼の者は神ではなく、仮想空間の支配者なのかもしれない。


 

 ま、そんなことを考えてもどうしようもないが。

 どこかに世界の外へ繋がるキーボードが落ちているわけでもない。

 こちらから向こうへ行くのは俺の本意ではない上に時間の無駄だ。



 

 さて、



 「あ、ハル君!」



 城門を抜ければ、止まっている馬車の中から顔を出し、手を振ってくるユア。

 そこに歩み寄り、乗り込むハルト。


 「待たせたな。」

 「打ち合わせは終わった?」

 「ああ。取り敢えず向こうに帰る。色々準備をしなければならないしな。」


 ―――こいつも設置しないといけない―――


 そう言い、背中のDNA記録式記憶装置を揺らす。



 


 「帰るか。」

 「うん!」


 馬車に揺られ夕日に照されて赤く染まる、ユアの髪を撫でるハルトであった。

 

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