狂科学者はどっち?
「......どうしたんですか? ハルトさん?」
問いかけてくる王女。
その声に意識を引き戻されるハルト。
いつの間にか王女を凝視していた自分に気付き、慌てて止まっていた食事を再開する。
「......? なにか考え事でも?」
「いや、少し国王との話しを思い出していた。」
「お父様と? どんな話ですか?」
不思議そうな顔で聞いてくる王女。
「俺がこの部屋に居ながら学園にいった方法について少々な。」
「そういえば......そんなこともありましたね。あれはどうやったんですか? ハルトさんは私の部屋から出ていませんでしたし。」
この王女は近い将来、身内となるのだから隠すまでもないな。
そう結論付けたハルトは、国王と同じ程度に軽く映像を映しながら説明する。
「......まさかハルトさんがこんな秘密を隠していたとは思いませんでした。」
言うほど隠してもいなかったがな。
少し前にはこれで襲撃者共を釣ったし。
「驚いたか?」
「はい。でも......」
と、そこで少し口ごもる王女。
「でも、何だ?」
「ハルトさんの意識がこちらにないのを知っていさえすればもっと色々できたかと思うと......ッ!」
お巡りさんこっちです。
いや、この世界では騎士だったか。
そもそも王女を捉える騎士自体いないな。
何やら不穏な発言を漏らす王女に戦慄するハルト。
まあ、
「常識的な範囲であれば俺は拒絶しないぞ? 既にお前もユア同様身内みたいなものだしな。」
別に抵抗はせんが。
前世でも今世でも個人の性癖は尊重しているつもりだ。
それに、
「別に意識は無いが、素早い動きや害意のある干渉があれば即座に目覚めるようになっているから無駄だぞ?」
じゃなければ安心して王女の部屋で意識を飛ばせなかったからな。
「......用心深いですね。私の前では無防備で良いんですよ?」
「そう言ってくる奴が一番怪しい。」
与えられた教育の賜物か、この王女は少し腹黒い。
公爵家令嬢であるユアの方は素直で明るいと言うのに......いや、あれはあの公爵が娘に甘かったせいか。
余りそういった謀略を学んでこなかったのだろう。
まあ、今のユアや俺にありきたりの謀が通じるとも思えないがな。
それらを受けてなお覆せる力があるのだから。
「美味しかったですね。」
「そうだな。」
「さあ、もう暗くなってきましたし、寝ませんか?」
「そうだな。」
そしてハルトは王女と一緒にベッドへ入るのであった。
****
「......ハル君? まだ帰らなくても良いの?」
「ああ。端末を置いていったら普通に勘違いしてもらえた。......まあ明日にはバレるかもしれんが。」
「良かったの? 新型だとか言ってたけど。」
「別に大丈夫だ。」
「そっか。」
学園の寮の一室でそんな会話があったのはまた別の話。
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