狂科学者は公開する
「......何の用だ?」
「......そろそろ話してもらうぞ?」
あー
「忘れていた。許せ。」
「国王に許せと言うのはお前ぐらいだろうな。」
「そりゃどうも。」
「......誉めていないからな?」
知っている。
「冗談だ......取り敢えず説明するのには準備がいる。これから俺宛にこの城に届く荷物を通してくれ。」
素材がなければ造れないからな。
支部でできる研究などたかが知れているので、端末は配置していないのだ。
直ぐに通信でメッセージを支部に飛ばし、素材を持ってくるよう命令を出すハルト。
「わかった。」
と、承諾する国王。
その顔は好奇心で笑顔に溢れているが、おっさんの笑顔を見る趣味はないのでそっと目を逸らし、素材が届く十数分を待機するハルトであった。
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「届いたが......これをどうするのだ?」
届いた素材は様々な物質をごちゃ混ぜにしたような塊。
それを見て不思議そうな顔をする国王。
それに、
「こうする。」
と言いながら手を翳し、大量の魔法陣を展開し答えるハルト。
荒れ狂う程膨大な魔力が素材を情報通りの構造体へと変換していく。
そして、
「......ほい、出来たぞ。」
そこにはハルトそっくりの端末が立っていた。
「......成る程。」
そう言って顎髭に手をやりながら呟く国王。
「分かるのか?」
「いや、全くわからん。......これが動くのか?」
「そうだ。......まあ見れば分かる。」
そう言いながら魔法生物同士の接続を利用し、端末と動作を同調させるハルト。
生身の右腕を曲げれば端末の右腕も曲がる。
一歩踏み出せば端末も一歩進む。
指の細かい動作も完全にシンクロしている。
「......。」
それを心を奪われたように凝視する国王。
「......中身はこんな感じだ。」
そう言いながら外装をパージすれば、現れる大量の人工筋肉とそれを支える漆黒の骨格、そして張り巡らされている大量の人工神経。
その状態で腕を曲げれば、上腕の人工筋繊維の束が膨張し、肘関節を曲げる。
指を動かせば前腕部の筋繊維が脈打ち、細やかな動作を実現する。
「んで、」
ガクリと全身を脱力させるハルト。
それとともに端末も崩れ落ちるが、すぐに立ち上がり、国王を外装のないむき出しの眼球で見据える。
『こうして本体の感覚を切れば、一人の俺として動けるわけだ。』
唇も外装とともに剥がれているため、歯が剥き出しの口でそう話すハルト。
一通り紹介は終わったので本体に意識を戻し、端末の外装を戻していく。
「......とまあ、こうやって学園に通っていた訳なんだが......大丈夫か?」
せっかく紹介しているのに全くリアクションがない国王に眉をひそめるハルト。
先程から端末を凝視して固まっているのだが、ちゃんと聞いているのだろうか?
「......ふう。いや、世の中は広いのだな。これ程の技術が存在するとは夢にも思わなかった。」
そして息を吹き返す国王。
どうやら端末に関していたく感心しているようだ。
そして一言、
「それ、私にもくれないか?」
「断る。」
魔法生物も十分な魔力もない国王に渡したところでただのがらくたでしかない。
イイ笑顔でしれっと要求してくる国王に、これまた笑顔で拒否するハルトであった。
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