狂科学者は草食系男子
「......ふう。」
「ハル君!」
「ハルトさん!」
三番を除き全員に無事魔石を埋め込み終えたハルトはため息とともに意識を戻した。
肉体的には少しも疲れていないが、あれだけ手術するのは精神的に疲れるな。
「何してたの?」
顔を覗き込んでそう聞いてくるユア。
「ちょっとした実験だ。」
「実験......ですか?」
不思議そうな顔で首をかしげる王女。
まあ本人には言っても良いだろう。
「お前の少ない魔力を増やすための実験だ。」
「ハル君? 何か見つけたの?」
「いや、な。魔物は心臓部に魔石を持ち、通常の動物よりも魔力が多く、強いだろ?」
「うん。」
「それを人間でもできないかと三十人程度使って実験していた。」
「手術だよね......上手くいったの?」
「ああ。」
「そっか。」
「あの......ハルトさん? 先程から何か不穏な言葉が聞こえる気がするのですが......。」
ん?
「......そうか?」
俺は法の抜け穴を行く合法的な実験をしているだけなのだが。
あいつらは俺の研究をぶち壊そうとしてきているし。
正直現状では結構安定した被検体の供給源となっているので有り難いが。
「......いえ。何でもありません。ところでハルトさん?」
「何だ?」
「三人で湯浴みしませんか?」
「しよ?」
王女が提案すると便乗してくるユア。
お前等本当に仲良くなったな。
つい最近までは俺に近づいてくる王女を威嚇するユアという状況だったはずなんだが......。
ま、
「良いぞ。」
仲が良いのは良いことだ。
......裸の付き合いと言うやつか?
王女とも打ち解けた今、親交を温めるのも吝かではない。
......異性が一人だけ混じって大丈夫なのかと言う倫理的な問題はあるが、内二名は積極的である上、俺自身が性欲に蓋をできる為、余り問題ではないだろう。
そう考え、承諾するハルトであった。
......その後、湯船で正面の座を争う女の闘いが勃発し、ハルトは二度と三人では入らないと心に決めたとかなんとか。
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