狂科学者は挟まれて寝る
ユアに呼ばれて部屋に戻ったハルト。
「......で、どういう話をしていたんだ?」
「秘密だよ?」
「秘密です!」
しかしお話の内容は教えてくれない様だ。
......本人達が納得すればそれでいいが。
それに、
「もう大分遅い。流石に寝ないか?」
睡眠時間が極端に短い俺は兎も角、慣れてないユアと一般人である王女はそろそろ寝ないと明日がきついだろう。
そう言って見慣れた巨大なベッドに横たわるハルト。
「......そうだね。」
「そうですね。」
それを見た二人は互いに顔を見合わせて、
「私は......右。」
「では私は左にしますね。」
何やら頷いた後にベッドに入ってくる。
ハルトの右腕をユアが抱え、左腕を王女が抱えている状況が出来上がる。
「......随分と打ち解けたようだな。」
「うん!」
「色々と話しましたし。」
それは良かった。
「......それはそうと、ユア?」
「何?」
「王女に『魔法生物』は教えたか?」
「まだだよ? ハル君の許可をもらってないし。」
「......そうか。」
「あの......何ですか?」
「今度話してやる。俺含め、俺が認めた人間しか持たない......魔道具の一種だ。」
間違いではない。
そもそもが全てを魔道具化して操ると言う機能なのだから。
「......楽しみに待っています。」
「......ハル君?」
「何だ?」
「......あげるの?」
「......どうだろうな。」
ユアは元々優秀な魔力量を持っていたから実用的に使えたが......この王女はな。
一般人に毛が生えた程度の魔力しか持っていない。
これでは二時間程度で魔力が底をついてしまうだろう。
魔力を増やす方法か......。
......そういえばそんな試みもやったな。
まだ実験を始めた頃、ドブネズミで近い実験を行った筈だ。
即座に研究所のデータベースへアクセスし、情報を引き出す。
それにざっと目を通し、記憶を引き出す。
......成る程。
魔石を捻じ込んだら魔物に変態して魔力が増えたんだったか。
しかし全ての被検体が魔物化しているな。
人体での検証はまだしていないが......コレ、大丈夫か?
人間が魔物化......魔人とでもいうべき存在になる可能性が高い。
その時のメリットとデメリットは検証しておく必要があるな。
ふと資料から意識を外し、研究所の地下の現状を確認するハルト。
被検体は後三十体少々。
全員精神はやや衰弱しているが、実験後毎回丁寧に修復しているため肉体は健康そのもの。
十分だ。
変態したとしてもそれはそれで使い道があるしな。
いい感じの結果が出れば三番の活動時間も増える。
後で検証しておくか。
先の予定を決め、意識を現実へと引き戻す。
「......何だ? まだ寝ていなかったのか?」
何気なく横を見たハルトをじっと見据える王女の両目。
「......私は......認められていますか? 貴方に。」
「認めはするだろう。だが、お前の魔力は少な過ぎるからな。まともな運用にはまだ耐えられないのは明らかだ。」
増やす方法もあるにはあるが。
俺が魂を少々分割するだけだしな。
しかしそれ程の価値が今の王女にあるかと言われれば......否。
何れにせよ、
「時間が必要だ。」
そう言って口を閉じるハルトであった。
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