狂科学者は聞く
フラストレーションが溜まっていたらしく、いつもよりもくっついてくるユアの相手をしながら風呂に浸かること数十分。
「ねえ......ハル君?」
「聞こえたか?」
「うん。」
直前まで楽しげにしていた二人だが、ふと真面目な顔つきになり、視線を交わす。
「......取り敢えず行ってくる。俺はこれで大丈夫だが、お前は服を着てから来ること。良いな?」
「......うん。」
そして湯から上がり、腰に巻いたタオルの端を押さえながら走り出すハルト。
王女の部屋に備え付けられている浴室のため、王女の部屋には一秒も掛からずに着く。
そこには、
「......ハルト......さん。」
部屋の絨毯に倒れ込み、ピクピク痙攣している王女が居た。
その近くには倒れた小瓶が一つ。
「お前......何飲んでんだよ。」
そう言って真面目な顔から一気に脱力するハルト。
「取り敢えず意識はあるようだし......ほれ。」
そう言って体内で魔法生物を生成、適当な量を魔力で覆って王女に投げつける。
それらは王女の体内にある異物を解析、迅速に無毒化していく。
勿論解析データはハルトの脳内に行くのだが、
「テトロドトキシンを致死量服用......お前、何がしたかったんだ?」
王女の行動が意味不明すぎる。
これまでの行動はまだ分かりやすかったが、これは最高に意味不明だ。
どう考えても自殺しようとしているようにしか見えない。
この世界にはお手軽な魔法があるので、極限まで体を張ったジョークなのかもしれんが......あまり笑えないな。
「あ......。」
「少し待て。まだ麻痺が残っているだろ。」
ずっと絨毯に倒れているのもアレなので、王女の背中と膝裏に腕を差し込み、ベッドまで運ぶハルト。
「で、何がしたかったんだ?」
麻痺から回復し、身を起こした王女にそう問いかけるハルト。
「......でしょう。」
ん?
「ハルトさんに......この気持ちを否定されて......。」
んん?
「あまつさえ......浅ましいものとして蔑まれて......」
んんん?
「私の王子様は貴方なのに......貴方は振り向いてくれない。」
んんんん?
「そんな私に......生きる価値なんてあるのでしょうか......ねえハルトさん?」
えー
つまり......
「結局......お前は俺は好きなのか? 利益云々ではなく純粋な意味で。」
利益前提の好意ではなかったのか?
あの狸親父もとい国王と共謀しているようにしか見えなかったからそうとしか思えなかったのだが......。
「......はい。......お父様は知りませんが。」
先程まで死を覚悟していたせいか、元気のない声でそう言う王女。
つまり......俺の現状は、
全面的な好意から来る様々な献身?を無視して、
ついでに好意そのものを疑い、
相手を不安でストレスフルな地獄へ突き落とした鬼畜野郎?
背中に嫌な汗が流れるのを感じる。
色々と倫理観が欠けているであろうこの脳みそでもこの程度の評価はできる。
勘違いとは言え、ある程度俺にも非があるのだろう。
やや王女の感情が重すぎる気もするが……
とはいえ、
「......お前の気持ちに気付けず、塩対応をしてしまってすまなかったな。出来る範囲で詫びようと思うのだが......何を望む?」
少々王女の精神状態にも問題があるような気がするが
詫びはしなければなるまい。
そうハルトは王女に提案したのであった。
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