狂科学者は捕まる
まさか自分につけられていた枷が国宝級の最強拘束具とは知らずに捻り潰してしまったハルト。
つか、
「そんな貴重なもんよく持ち出してきたな......。」
「いえ、そこまでしなければハルトさんを捕まえられないと思いまして。」
いや国宝は使っちゃあかんだろ。
あと、
「古代遺跡ってなんだ?」
「そうですね......お父様?」
「......何れお前の夫となる男だ。折角あの土地を与えるのだし、話しておいた方がいい。」
言葉の端々から伝わるこの面倒くさそうな感じ。
しかし古代の遺物か......あれか? 転生する前に女神が言っていたこの世界は文明がいくつもつぶれていたって話しか?
腕輪の性能を考えるに、そこからオーバーテクノロジーが出てきたと言うことだろうな。
まあ俺にとっては紙粘土レベルだったようだが。
......気になるな。
解析すればかなりの新技術が得られる可能性が高い。
素材の強度はともかく、魔法技術はもっと発展した時代だっただろうしな。
俺の持つ魔法の知識や技術はあくまでも前世の技術をこちらの法則に合わせて改良したもの。
あくまでも前世でできたことの延長線上にあることしかできない上に、効率が少し悪い。
つまりこちらの法則に沿って生まれ、発達した技術はもっと効率のよいものである可能性が高いのだ。
愚直な計算をするよりも解と係数の関係で二次関数を展開する方が早いみたいな感じだな。
といってもこの世界のこの文明にそんな概念はないか。
脳とコンピューターの違いとでも言えばいいか?
極めて少ないエネルギー消費で最適解への近似値を叩き出す脳と、膨大なエネルギーと巨大なスペースを用い脳の働きを模倣して尚それに追い付けないスーパーコンピューター。
そんな感じの差が出るわけだ。
もっとわかりやすくするとアナログとデジタルの差だな。
この世界にある魔法は物理法則と密接に繋がっている。
恐らくだがアナログの技術の方が親和性が高いのだろう。
しかし残念ながら俺の知識は論理計算と生物学に特化している。
よって技術力をさらに上げるためには教科書となるものが必要なのだ。
「......古代遺跡というのは、この王家が管理している領域にある遺跡のことです。」
「そこに前の文明の遺産が残っていたと。」
早速結論を叩き出すハルトに、少し驚く王女。
しかし......
「それにしては俺は一度も聞いたことがない。つまり何らかの情報統制が取られていると見ていいだろうな。」
実は俺の情報網はかなり広い。
二術院に来る貴族達は義肢のメンテナンス中にいろいろ愚痴を溢すからな。
あと普通に土産話として持ってくる場合もある。
普通に会話することだってあるしな。
しかし古代の遺跡なんてものは一度も聞いたことがないのだ。
王家か公爵家辺りで情報が止められているのは想像に固くない。
つまり、
「それを俺に教え、おまけに娘と件の領地も寄越してくるっていうのは......俺が調べ、なにか出てくれば万々歳......と言ったところか?」
「......まあ有り体に言えばそう言うことだ。遺跡自体つい最近見つかってな、現在その情報は止めてある。......ああ、お前につけた腕輪も国宝と認定したのはこの私だからな、壊れていても余り問題ではない。そこは安心してくれ。」
「そいつは良かった。」
弁償とかめんどいことにならなくて良かった。
まあ別に上位互換を作って渡せばそれでもいいんだろうが。
もっと言うと俺は監禁されていた被害者で罪人(仮)なんで弁償とか謎の主張をされても困るんだがな。
「それで......悪くないだろう?」
「本当にいい性格してんな陛下殿?」
本当にくそったれだ。
こんなによい餌を持ってくるとはな。
「無論、利益は分割だ。」
「当たり前だろう? 成果の報告ぐらいはしてやる。」
なら良いとばかりに首を振る国王。
商談成立とばかりに口角を吊り上げ、笑っていない目を交える二名。
「じゃ、俺はこれで帰らせてもらう。」
「待て。」
ん?
話すこと他になんかあったか?
「お前が学園にどうやって行ったか、その詳細はまだだぞ? お前を探すことにどれだけ忙しかったと思っている?」
あ、最初のアレはそういう意味だったのか。
だがお前らの苦労とか知ったことではない。
ふむ、
取り敢えず落ち着いて風属性の魔法陣を展開、部屋の扉を薄く開けて、
「一回言ったが、俺は外に行っていない。それが全てだ。」
今だッ!
扉が空いている今のうちにッ!
そしてハルトは部屋から脱出し、
ガシィッ!
「待ってください!」
そびれたのであった。
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