狂科学者は食事を要求する
ガチャリ
「失礼。」
「来たか。ところで貴様......何をやらかした?」
「いやいや、大したことではないですよ、叔母さん。」
「誰があやつの妻になんぞなるかっ!」
ほう?
「ではその言葉をそのまま叔父に伝えておこう。」
「やめいっ! ......あ!?」
「ん? 何故だ?」
嫌いじゃなかったのか?
もし違うなら、素直にしたほうが楽になるぞ?
「き......貴様......。」
「冗談だ。」
そう言ってくくくっと意地の悪い笑みを浮かべるハルト。
それを忌々しそうに睨む学園長。
「......で、今日は何用だ?」
「本当に言わないんじゃろうな? ......王宮からお前を捕縛するために騎士達が来ておる。どうにかしろ。」
あーやっぱり来たか。
ではユアに回収してもらうとしよう。
「後でユア......メルガルト家のユーフォリア嬢が回収しに来るから通してやってくれ。俺は大人しく王城に戻るから安心しろ。」
「......回収? わかったのじゃ。」
『ユア、今すぐ俺の身代わりを回収しに来てくれ。保管は任せる。』
『わかった!』
よし、
戻るか。
「じゃ。」
そして俺は仮初の肉体を素材の塊へと還元していった。
人工皮膚が剥がれ落ち、人工筋肉がゴムと鋼材の混合物へと戻る。
配線が飛び出したと思えば、粒子となって素材の塊へ混ざり込む。
関節が融合して固まり、徐々に潰れていく。
眼球の変形により驚愕した顔の学園長も見えなくなった。
すぐに視界も途絶え、神経接続が切り離され内蔵された魔法陣が全て消去されて行く。
まあ端的に言えば人間がボロボロと溶けて崩れていく様子なので見ていて気分の良いものではないだろうが、ドラゴンスレイヤーの叔父と行動していた人だ。そこら辺は大丈夫だろう。
後はユアに回収してもらうだけ。
さて、と。
周囲に張った結界を解除し、立ち上がるハルト。
「朝起きたと思ったらまた寝て、学園にもう一人現れたと思って呼び出したらこっちのお前が起きる......忙しい奴だな?」
そして疲れ切った顔でそうぼやく国王。
何であんたが疲れてんだよ。
それもこれもあんたの私念が原因だろ。
「いやいや、俺はしっかり起きていたぞ? 学園で授業を受けるのに忙しかっただけだ。」
「お前......絶対謹慎の意味を間違えているよな? そうだよな?」
「『罰として、家にとじこもるなど行動に気をつけ、品行をつつしむこと。』だろ? 立派に実行しているぞ?」
「......どういうことだ?」
気付かないか?
「俺はこの部屋から一歩たりとも外出していないし、同時に真面目に授業へ出席してもいる。十分謹慎の定義に当てはまった行動だろう?」
「む......そう言われてみると......そうなのか?」
俺の分身は外出したわけではなく、外で『発生』したものだからな。
それより、
「俺今朝から何一つとして口にしていないんだが......飯は食わせて貰えるよな?」
多少体内に埋め込んだMOで不要な代謝を抑制し、水分の再利用も行なっていたが、流石に腹は減るからな。
「ぐ......勿論だ。だが......勿論私の娘と食べて貰う。」
ん?
「それだけでいいのか? 勿論良いぞ。」
何だ、身構えて損した。
「では少し待っていろ。用意をさせる。」
「おう、旨いものを頼む。」
「......ふ、その余裕もいつまで保つか見ものだな。」
なんか企んでいるようだが......まあ取り敢えず飯にはありつけそうで良かった。
いざとなったら『殺戮機獣』に食事を配達してもらおうと考えていたハルトはほっと胸を撫で下ろしたのであった。
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