狂科学者、被告になる。
嫉妬したのか焦ったのか、ユアにセカンドキスを奪われたハルト。
その目にはユア以外のものは映っていなかった。
「あの......ハルトさん?」
王女の声は勿論届かない。
そのまま穏やかな表情でユアの頭を撫でるハルト。
当然、その不自然さにユアも気付く。
「ハル君? 殿下が呼んでるよ?」
ああ、そうらしいな。
聴覚は弄っていないので聴こえている。
聴覚だけなのでどこにいるかはぼんやりとしか分からんがな。
そして素直に反応するのも負けた気がするので気が引ける。
よって、
「王女? ここに居るのか?」
「「え?」」
突然の見えない発言にハモるユアと王女。
「......どういう事ですか?」
「ハル君......それって......。」
「ああ。ここを少し弄って王女を認識できなくなった。王女との婚約を強制されたからな、ちょっとした報復だ。俺の相棒はお前だしな。」
そう言って指で己の頭を叩き、悪戯っぽく笑うハルト。
「え?」
「ハル君ッ!」
理解が追いつかないらしい王女。
まあ見えないので表情は分からんが。
そして感極まった笑顔で抱き締める力を上げるユア。
中々成長したようだな。
もし俺でなかったら内臓を擦り潰されているに違いない。
そんな感じでユアの相手をしているハルトに、無視され続けていた王女は堪らず不満を零す。
「......あの時お父様の前で婚約いたしましたのに、あの言葉は嘘だったんですか?」
苛立ちのせいか、よく響く声で。
その瞬間、教室の空気は凍ったのであった。
「遅れてすまない。それでは授業を始めようか。......ん? なんでこんなに静かなんだ?」
「「「「「「......。」」」」」」
****
王女のカミングアウトから数日後、
ハルトが王女と婚約している。
という噂が学園中に広まっていた。
そしてハルトは、また国王に呼び出されていた。
「これより被告ハルトの罪状を読み上げる。」
「......俺が何をしたっていうんだ。」
何故か裁判の被告となって。
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