狂科学者、叔父と会う。
「やあ、君が兄さんの言っていたハルト君だね? 僕は君の叔父のレントだ。はじめまして。」
「はじめまして叔父さん。ハルトです。」
右腕が肘の上から欠けている叔父に挨拶するハルト。
そしてハルトの話し方に驚くレント。
「......本当に三歳とは思えない受け答えだね......。話には聞いていたけど、なんだか不思議な感覚だ。」
「あはは......まあ、取り敢えず叔父さん、これを見て貰えませんか?」
適当に笑って流し、モルデモート一世を見せる。
それを見て、
「これは......ドブネズミ? 拘束されて何かついているけど......?」
怪訝そうな表情をする叔父さん。
「この子の目の前にこの小皿を差し出してみてください。」
そう言ってエサの盛られた小皿を渡せば、恐る恐るといった感じにそれを差し出す叔父さん。
穏やかな口調のせいか、右腕を失って弱っているのか、とても達人ドラゴンスレイヤーとは思えない程覇気がない。
叔父さんに差し出されたエサを認識したモルデモート一世は、手慣れた感じで素早く滑らかに義手を動かし、それを取り、口へ運ぶ。
プクーと膨らみ、縮む義手の人工筋肉。
それは幾度も改良され、当初よりも強力に、敏捷に、繊細な動きを見せる。
「こ、これは......このドブネズミが動かしているのかい......?」
俺の真意に気付き、恐る恐る、だが希望を見つけたような、すがるような目で聞いてくる叔父さん。
それに俺は笑顔で答える。
「まだ研究中ですけどね。今回はこれを見てもらい、それを踏まえて叔父さん専用の新しい義手の性能を細かく詰めていこうと思っています。」
「ははっ......本当に三歳だとは思えないよ。その言葉遣いもだけど、これ程自由自在に動ける義手を作れる人物なんて世界中見てもハルト君だけだろうね。」
「叔父さん、話はまだですよ。少し落ち着いてください。」
「......? なんだい?」
「今はまだ研究していませんが、叔父さんのその腕、本物を生やすことができるかもしれません。その時にはこの義手に慣れたことが邪魔になるかもしれません。おまけにこの義手も自由自在に扱えるようにするのは結構難しいです。それでも義手をつけますか?」
前世の地球でも同種の肉体から細胞だけを溶かし出し、残った骨組みに本人の細胞から製作した万能細胞を注入することで拒絶反応のない臓器や手足を作り出す技術があった。
それは神経の接続が課題だったが、この世界では神経修復程度片手間にできてしまう。
そして......俺はそのやり方や使用する薬品も大雑把に知っているため、調整をすれば数十年後には本物の四肢が戻る可能性もゼロではない。
今のところ未知数なのは万能細胞の作り方だが、魔法もまだまだ未知数。
十分勝算はあると言っても良い。
だが、義手を使っていると腕が生える頃には義手の癖で本当の腕が動かしにくくなる可能性があるのだ。
その発言に目を丸くする叔父さん。
「そこまでできるのかい? まあ、でもその頃には死んでいるかもしれないし、義手を頼むよ。」
「わかりました。あと義手の材料で少しお願いがあるのですが......」
「僕に用意できるものなら用意するよ。」
「では......。」
そこで一旦言葉を切って、
「かなり丈夫な鋼材と、ドラゴンの素材を戴けませんか? 可能な限り壊れない物を作りたいので。」
ドラゴン素材を要求した。




