狂科学者は領地を決める
「父上が君と話がしたいらしい。」
「うげっ。」
「てことでよろしく頼むよ。」
うへぇ......
またかよあの国王。
絶対俺をこき使う気だろ。
ハルトは嫌な顔をするが、個人の気分なんてものは考慮されていない。
この国は絶対王政の国家。
そこの貴族に組み込まれる以上、多少は従わないといけないのだ。
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「で、今度は何の用だ?」
「今日はな......お前の主張する『研究者育成のための学園』とやらをどうするかについてと、お前に与える爵位やその他諸々についての話だ。」
ほう、今日は某青い狸に縋り付く能無し眼鏡のような要求はしてこないのか。
それなら少しは意義のある話ができそうだ。
「まず、学園を作るにあたって、必要な物はあるか?」
そうだな......
「素材、後は芸術家......その辺りは欲しい。建築はこちらが全て請け負おう。」
なんせデザインさえ決まれば後は現地で魔法陣にデータを流し込むだけで完成するのだ。
大工はいらん。
逆に俺はこの世界の芸術をよく知らないのだ。
多少は芸術性もあった方が良いだろうと言うことで芸術家の手は借りたい。
「それだけで良いのか?」
「ああ、大工はいらん。」
「......そうか。それでは必要な素材の種類と量が決まったら教えてくれ。」
「了解。」
「後、爵位は公爵位で、姓はサイバストルにするんだったな......中々悪くないのを捻り出してきたな。これで良いか?」
あ、結構微妙だと思っていたけれどこっちの世界では悪くないのか。
俺の感性が微妙だという可能性もあるが。
「良いぞ。」
「で、後は領地の問題だ。何処が良い?」
バサッと国王がテーブルの上に地図を広げる。
地図か......これ程の規模は今世では見たことがないな。
恐らく貴重品なんだろう。
そう思ったのですかさず記録し、データを研究所へ送信する。
そして国王は地図の三ヶ所を示しながら、
「お前に与えられるのはこの三つの内どれかだ。どれが良い?」
ふむ......
一つは完全に国境付近の領地だ。三つの中で一番大きいな。
もう一つは王都を挟んでメルガルト領の反対側。
最後のはメルガルト領の隣だ。これは一番小さい。
ま、
「ここだな。」
当然メルガルト領の隣だ。
あっちには二術院があるからな。
遠くにいるのは少し都合が悪い。
「良しわかった。税率などは頭に叩き込んでいるな? こっちは領地の情報だ。一応目を通しておけ。」
そう言って書類を手渡される。
ふむ......
ざっと目を通した感じ、人口や毎年の収入、風土的なことが書かれていた。
ま、あとでゆっくり読むか。
「......そういえばお前はメルガルト嬢と非常に親しいようだが......どのような関係なのだ? ああ、これはあくまでも私の興味本位だ。気遣いは無用だぞ。」
うわー
興味本位とか言って絶対こっちが本命だろ。
国王はまだ俺を解放する気はないらしい。
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