狂科学者は添い寝する
部室の改良を終えたハルトは寮の部屋に戻った。
夕飯を研究室で済ませ、就寝ギリギリの時間帯まで粘ったのですっかり外は暗くなっている。
流石にあの王女も諦めたようだ。
部屋の外にも中にも人影は無い。
......しかし、
「......ユアだな?」
俺には見えているぞ。
魔力を虚数属性に変換して軽く前に放射、行使されている魔法を打ち消す。
すると、
「......えへ。」
と微妙に照れた様子でユアが姿を現した。
「光学魔法陣の上から隠蔽したけど......どうやったの?」
いや、どうしたもこうしたも、
「光学迷彩は音波と光学の測定に差が発生する。実体が消えるわけではないからな。」
そういった視認出来ないものは即座に視界に写るようシステムを組み上げているからな。
それは教えてある筈だが......
「......そういえば。忘れてた。」
で、
「まだ寝ないのか? というか同じ部屋の奴には断ったのか?」
確かルームメイトが一人いたよな?
そう聞くと、ユアは事もなさげに、
「魔道具で寝ている外見だけ残してきた。」
そういえば今日は珍しく一人で作業していたな。
「今日作ってたアレか?」
「うん。」
「因みに......何故俺の部屋に?」
まあユアがネグリジェ姿で枕を抱えているので容易に想像は付くが。
ユアは少し躊躇いながらも、
「......一緒に寝ていい?」
知ってた。
ま、
「良いぞ。」
「良いの!?」
やったーといった感じに目を輝かせるユア。
そんなに寂しかったのか。
寂しがり屋なところも変わっていないな。
「俺はいつもこっちで寝ているから、そこのベッドを使え。」
この部屋は二人部屋なのに俺一人しかいないからな。
ベッドも余っているのだ。
なので別に問題はない。
「えっと......ハル君?」
「ん?」
違うのか?
「私......ハル君と一緒に寝たいの。同じベッドで、一緒に。」
「あー、まあ......良いぞ。」
そっちか。
まあいいが。
「良いの?」
落ち着いているようで興奮を隠しきれないユア。
......いや、良いと言うか......公爵家の令嬢が平民と添同じベッドというのは風聞的には宜しくないんだろうが......
まあ、俺は一応公爵位を持つことになるらしいし?
ユアが俺のこと大好き人間であることは自明の理だし?
俺自身は既に埋められた外堀の上に更に土を盛られている状況なわけで、今さら何も変わるわけがない。
さっさと寝る服装に着替えたハルトはベッドに入り、ユアに手招きする。
「ほれ、寝るぞ。」
「うん!」
その胸に飛び込み、横になった体を丸めるユア。
そして二人は仲良く眠りについたのであった。
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