狂科学者は呆れる
脳が焼き切れるほどの苦しみの果てに己の名字を決定したハルト。
しかも、終わってから再度考えてみれば、適当に削ってくっつけただけと言う先程愚の骨頂と称したばかりの杜撰な成り立ち。
「......もうどーにでもなれ。」
疲れ切った顔でそう呟き、再びベッドへ倒れ込む。
「......で、お前はどう思う?」
そう声を掛ければ、モゾモゾとベッドの下から這い出てくるユア。
「良いと思う。」
「そうか。」
なら安心だな。
なんせ大貴族の令嬢からのお墨付きだ。
お前がなぜ俺のベッドの下に潜んでいたのかについて小一時間ほど問い詰めたい所だが、今はそんな元気も出ない。
「ねえ......ハル君?」
「ん?」
「......貴族になるの?」
「おう。」
「あれだけ嫌がっていたのに?」
その元凶はお前なんだがな。
一瞬白目を剥くも、すぐに穏やかな顔になるハルト。
ま、
「これも流れだ。仕方あるまい。......嬉しいか?」
「......わかんない。」
「ん?」
どうした?
「私......ハル君に行かないで欲しくて......言っちゃった。」
そうだな。
「でも私は......ハル君を......縛りたくない。」
そうなのか。
てっきり研究室に閉じ込めて軟禁するタイプかと思っていたぞ。
「ハル君の側にいられて嬉しいのに......嬉しいはずなのに......」
のに?
「......悲しいの。」
ユアの顔を見れば、頬を伝い、止め処なく溢れる涙。
ハルトは少し驚くも、直ぐに平静を取り戻す。
「お前と知り合って十年か。」
不意にハルトが口を開く。
早いもんだ。
俺もユアも随分と背は伸びたし、顔つきだって変化している。
それでも......
「甘えん坊な所だけは変わらないのな、お前。」
体を起こし、よしよしと幼子をあやすようにユアの頭を撫でるハルト。
「ぐすっ......ごめんなさい。」
「許してやるからもう謝るな。」
「......うん。」
全く、世話の焼ける幼馴染みだな。
そんなことをまだ引きずっていたとは。
ユアは微妙にメンタルが弱い。
カウンセラーではないが、まあ暫くはこのままで居てやるか。
たまの休みも悪くないだろう。
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