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狂科学者は妥協した

 「......おはよう。」

 「おはよう、ハル君。」


 

 寮のベッドに横たわった状態で脳内会議を終え、現実に帰還したハルト。


 「ところで......何故そんなに顔を近づける?」

 しかし目を開けた先にはユアの顔があった。

 それも覗き込むとかいうレベルではなく、鼻と鼻がくっつきそうなほど近づいている。

 顔が近いせいで少し荒い鼻息までバッチリ聞こえるぜ。


 「......ハル君の寝顔を堪能していただけ。」


 そう言うユア。

 だが顔の赤さを隠しきれていない。

 ついでに俺の経験がそれを嘘だと叫んでいる。

 「いや、絶対にそれ以上のことをしようとしていただろ?」

 顔が微妙に斜めだし、俺の唇を奪おうと狙っていた可能性が高いな。


 「......ハル君......私のこと、......嫌いになった?」


 

 そう言って少し悲しそうな表情をするユア。


 最近落ち込みやすくなっているな。

 恐らく俺への負い目を完全に克服できていないのだろう。

 まあ反省出来るのは良いことではあるが......これは少し過剰だ。


 仕方あるまい。

 「気にするな。」


 そう言って仰向けのままユアを抱きしめるハルト。

 


 「......ハル君?」

 「......生きていく上で完全に正解の選択などありやしない。仮にそんな出来レースがあったとしても、ゴールを知っているシミュレーションゲーム並みにつまらないだろうな。」


 そして、

 「だからこそ人は己の幸せを模索する。ユア、お前があの時とった行動も、お前自身の幸せを考慮した結果だ。」


 

 まあ、

 「確かにあれは少し拙い選択だった。」

 その言葉に身を固くするユアの、背中をポンポンとあやす様に叩くハルト。


 だが、

 「......一つだけ良いこともあった。何だと思う?」


 「......分かんない。」


 ま、そりゃわからんだろうな。

 「俺は前世で死に、女神の願いによってこの世界に転生した。で、そんな俺の役目はな......この世界にとっての刺激となることだ。」

 「......刺激?」



 そう、

 「この世界には一度高度な文明があった。だが......それは数千年前に崩壊してしまった。理由は人間同士の戦争。世界は荒廃し、技術も失われ、それでも自然と文明は再生した。」



 だがな、

 「その文明の発達はあるところで停止した......それが今の状態なんだが、そこから発展する兆しも見えない。......あの『解析機関』は分かりやすい例だな。」

 失敗例という意味でな。



 で、

 「そんな世界を発展させるため、女神は刺激となる人間を探した。それが俺だ。」



 だから、

 「俺が新技術開発の旗印となるのは役目的に少し都合がいいわけだ。」

 なんせ国家レベルで影響を与えられるのだ。


 「......貴族になるのは嫌じゃ無いの?」

 「勿論億劫だがな......考えてみれば悪いことばかりでも無い。」

 領地を押し付けられても統治を自動化すればだいぶ仕事は減るだろう。

 研究の資金が増額して、領民達にも余裕の生まれる状態が出来れば尚良しだ。

 大多数の幸福というのは安定した治世をもたらす。

 


 人付き合いは......今更って感じもする。

 既に二術院でかなりの貴族との繋がりが出来てしまっているからな。



 資金は減らず、増額される可能性が高い。

 領地を押し付けられたとして、

 領民に教育を施せばこの世界の教育レベルが上がる。

 広い土地を得られるから大規模な施設も建造できるだろう。

 統治は自動化すれば良い。

 人付き合いは......まあ引きこもっていよう。煩い奴らは黙らせる。そのための公爵位だ。



 そんなわけで俺を縛る鎖は意外と少ない。

 だから俺は妥協することにしたのだ。

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