狂科学者は謝る
『今日は集まってくれてありがとう。親父。あと公爵も。』
ユアを慰め終わったハルトは緊急で脳内会議を開いた。
といっても対話をするのは自分ではなくメルガルト公爵と、父親なのだが。
二人とも脳内に魔法生物を投与しているのでこうして手軽に対話できるのだ。
『私に用があるなんて珍しい......なんだ?』
『わしは知っているぞ。』
『そうなのか?』
『......ハルトよ、これは言っても良いかの?』
『問題ない。』
どうせ今から言おうと思っていたことだ。
『ハルト......勿論お主の息子のことだが、近日中に公爵位を与えられることとなった。』
『......それは本当か?』
『陛下から知らせが届いた。間違いない。......しかし......ハルト、お主、何をしたのだ?』
そこは知らんのかい。
『......俺は陛下の薄毛を治療して対価に「解析機関」を見学させてもらっただけなんだが。』
『薄毛?』
『......。』
すると何やら気まずそうに口を噤む公爵。
なんか怪しいな。
『......どうした?』
どうやら親父も気付いた様だ。
『い、いやっ、気にするな。』
そして焦り出す公爵。
明らかに何かを隠していますといった反応だ。
貴族としてはアウトな誤魔化し方だが......この精神世界に慣れていないせいもあって感情が表に出やすいのだろう。
『おい公爵、あんた絶対何か隠しているよな?』
『いや......まさか......そんな事は......。』
追加で冷や汗を流し始める公爵。
本人の感覚が反映されているせいもあって水を頭からかぶったような外見になった公爵。
怪しさしか無い。
『......ああ、成る程。』
そして何やら頷き、一人納得した顔をする親父殿。
親友だった経験から何かを察したのだろう。
『親父......結局なんなんだ?』
『推測で良いか?』
『勿論。』
真偽の判定は横の公爵の顔を見ればわかるしな。
『と言っても大した推論では無い。......こいつが陛下に薄毛の相談を投げかけられ、冗談かどうか知らんがお前の名前を出したのだろう。』
『......だ、そうだ、合ってるか?』
『......合っておる。満点だ。というわけですまん。』
先程まで言い渋っていたとは思えないくらいあっさりと認める公爵。
『それだけか?』
『それだけだ。』
これは本当らしいな。
『なら良いか。今回は薄毛がきっかけになったが......どっちにしろこうなっていた気がするしな。』
そもそも俺は科学者であって政治家では無いのだ。
そう言った謀略は得意では無いし、そうである以上、色々仕掛けられる策に抗うのは難しい。
よほど待遇が劣悪で無いのであれば国を丸々潰す理由にはならんし。
『......て事で親父、いろいろ迷惑をかけてすまんが、宜しく。』
『......私はお前に後を継いでもらいたかったんがな......。』
すまん。
なんなら肉体年齢を若返らせてあげるからお袋と励んでくれ。
そう内心で謝るハルトであった。
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