狂科学者は落ち込む
「......。」
「......えっと、ごめんなさい。ハル君。」
「......いや、もうそれは......良い。いや、良くはないが......」
「......ごめんなさい。」
教室の隅に漂う、暗いオーラ。
そこにはハルトが突っ伏していた。
前世ではよくある表現だったが、この世界でハルトは強大な魔力を保有しているのもあって、比喩という域を超えている。
本人が落ち込みすぎているため制御が甘くなったそれは大量に漏れだし、負の感情を漂わせ、周囲に悪寒を感じさせるのだ。
......どうしてこうなった......。
ハルトの脳内はそんな思考で埋め尽くされていた。
いや、
どうしてこうなったのかは分かる。
俺が遠くに行ってしまうことを恐怖して、縛り付けようとしたユアが暴走した。
それに尽きる。
国王の思惑や俺の言動も問題なんだろうが......大筋はそんなもんだ。
どちらかと言えば......何で俺が、というのが正解だろう。
前世で一般ピープルしていてもこちらの世界の貴族より良いもんが食えた。
着るものの質も段違いだし、向こうには便利なスマホもあった。
そんな平民生活を謳歌していた俺にとって、貴族というのはただの重りだ。
こちらの価値観からすれば貴族になるのは何十年に一度あるかどうかの大出世だが、俺にはとても理解できない。
望む望まない以前に興味がない。
しかし......既に賽は投げられてしまった。
近いうちに親父たちのところにも何らかの知らせが届くだろう。
「......はあ......取り敢えずやってしまったことは仕方ない。」
「......ごめんなさい。」
「だからもう謝るのはやめろ。」
「うん......。」
なんか調子が狂うな......。
いつも元気なユアが落ち込んでいるのを見るのは気分が悪くなる。
「ま、気にするな。」
取り敢えずは、ユアの気分を盛り上げないとな。
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