狂科学者、相談を受ける。
「なあハルト?」
「何? どうしたのパパ?」
「いや、お前にちょっと相談があってな。聞いてくれるか?」
「分かった。とりあえず座ってよ。」
真面目な顔で切り出してきたので、とりあえず研究の手を止めてアランに椅子を勧める。
「で、相談って?」
「私の弟で、ハルトの叔父の存在は......話したよな?」
ああ、確か名前は......
「レントおじさんのこと? 確か結構強いハンターって言っていたね。」
この世界にいる魔物は危険な反面、アラクネの糸など魔物素材という特殊な性質を持つ素材の宝庫だ。そして魔物を狩って時に素材を売りさばき、日銭を稼ぐ人達はハンターと呼ばれ、ハンターギルドで管理されている。俺の叔父もそこでハンターをやっているのだ。
「ああ、それであっている。で、そのレントなんだが......」
―――ミスってドラゴンに右腕を食いちぎられたらしい―――
「......まだ生きてるの?」
「一応な、水属性の治癒魔法を少し使えたから、それで傷をふさいだらしい。」
それは良かった。
てか、ドラゴンと戦うとかよほど強かったんだな。
ドラゴンっていうのは飛行系の魔物の中でも最強種に含まれる。
身にまとう鱗は軽く、鋼鉄よりも丈夫だから、大抵の攻撃は弾かれる。おまけに再生能力もえげつなく手足を奪った程度では数か月後に再生してしまう。翼の被膜も強靭で、しなやかかつ弾力がある癖に刃物が通らないというチートっぷりである。おまけに生命力が抜群で、首を切られても首だけでしばらく生きている。口からは個体によって異なる属性のブレスを吐くのも特徴だ。
そして俺は根本的な疑問を口に出した。
「おじさんはなんでドラゴンなんかと戦ったの?」
「......? レントはドラゴンスレイヤーだぞ?」
......?
なんですとっ!!??
「マジで?」
「マジだ。......お前は基本的に家にいたから知らないのかもしれんが、外では噂で持ち切りだぞ?『無敗のドラゴンスレイヤーが敗北した』って。」
「そうなんだ。」
引きこもっていたから知らなかった。
なるほど、大体話が見えてきたぞ。
「それで右腕の代わりになる義手を作れないか? ってこと?」
「察しが良くて助かる。金と素材は出すから作れないか?」
......作れなくはないだろうけど......
「とりあえずおじさんと会って傷の具合とか程度とか、本人に必要な機能とか確かめないと無理かな。」
クライアントの意見は大事だ。
うまくやればドラゴン素材には興味あるし、横流ししてもらえるかもしれない。
義手の機能不全で死亡とかはやめてほしい。
それにまだ手術の道具がそろっていないのだ。モルデモート一世みたいに首にぶっさすには人体はぶ厚すぎる。
あ、前腕に銃器を仕込んだら面白そう。
人間で実験するチャンスが来たことに興奮するハルトであった。




