狂科学者は遅刻する
国王と別れ、城の門までやって来たハルトは少し思案する。
「ここから歩いていては間に合わない......か。」
まあ良い。
歩かなければいい話だ。
即座に解決策を叩き出したハルトは足をグッと曲げ、その超人的な脚力を瞬時に解放する。
その体が向いているのは、学園。
魔法生物が算出した方位で宙を舞ったハルトはそのまま王都の上空に到達し、最初の加速のみで前進しながら落下する。
家々を飛び越え、轟音とともに着地したのは学園の訓練場。
地面に入った罅を重力を強化して適当に均し、自身の教室に向かって走り出す。
そしてそれを呆気に取られながら見送る他クラスの教師と生徒。
彼等から見れば、授業を始めようとした瞬間轟音とともに魔力も纏っていない人間が降ってきて、地面が割れたと思ったら即座に魔法で直して去っていった何かヤベェ奴という認識に違いない。
そしてその認識は間違っていない。
普通の人間には身体強化無く数百メートルの固定具も無いフリーフォールなど出来ないのだ。
そんな事をすれば地面に真っ赤な花を咲かせること間違いなしである。
しかしそんな不可能を平然と可能にしたヤベェ奴もといハルトは気にせず校舎内を駆け回る。
そして比喩でもなんでもなくリアルに靴底で床を削りながら急停止したのは、本日授業が行われる教室。
訓練場から走った道のり、約四百メートル。
到達時間、着地から約五秒。
そんなこんなで木と石材で造られておりそこまで強く無い校舎を破壊しないよう適度に速度を落としつつ進んだハルトだが、
「起立! 礼!」
ガラッ!
「「「「「「!?」」」」」」
「すまん、国王に呼ばれてたんで遅れた。」
どうやら後数秒遅かったようだ。
その後、校舎の至る場所で階段が崩落、床が抜けるなどの珍事件が起きたのはまた別の話。
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