狂科学者は嗤う
ユアの苦手なものが発覚して数日後、ハルトは王子経由で国王に呼び出されていた。
「で、何用でございやがりますか? 陛下殿?」
「......人払いをして正解だった。その尊敬する気の無い不気味な敬語擬きもやめい。」
―――もし聞かれたら私はお前を不敬罪から庇わなくてはいけなかったではないか。
「いや、元々そっちが息子を使って勝手に連れてきただけだからな? この国を思って城を消し飛ばしたい衝動を押さえきった俺に咽び泣きながら感謝して今すぐ解放しろ。」
そう呆れ顔で続ける国王を真正面から見据えるハルト。
内心の強烈な不満を隠そうともせず、正々堂々と見下した発言を連発する。
まあ不敬罪で捕まったとしても牢ごと粉砕して脱出できるので余り問題ないが。
ハルトの漏らす威圧感に嫌な汗をかきながらも、表情を保ち、
「それには感謝しているが......一つ相談があるのだ。ああ、そこまで重要な話では......私個人にとっては重要だが......まあ、個人的な相談なのだが......。」
と話始めるのだがどこかどもる国王。
自分から切り出しておきながら勝手に混乱するのはやめてもらいたい。
研究中に乱入してきて引っ張ってこられてとても迷惑しているんだが。
「......で?」
そう聞くと、国王は少し躊躇い、
「......薄毛を治す方法、知らないか?」
そう聞いてきた。
は?
「薄毛?」
「うむ。」
「あんたが?」
「......最近な。」
「......。」
そして黙り込むハルト。
だんだん顔が下がり、肩が震えてくる。
そして、
「......いや、絶対王政の最高権力者ともあろう者がただの平民呼んで何を相談してくると思ったら......薄毛の相談?」
クックックッと声を殺して笑うハルト。
そして、
「ハーハッハッハッ! いや......本気!? 面白すぎるだろ!?」
大きな声で嗤い始めた。
笑い方が完全に悪役のそれである。
どうやら国王の言葉はハルトの心にクリーンヒットしたようだ。
これまでに無いほど激しく腹部を痙攣させている。
その両腕は目の前の机をバンバンと叩き、何処からかミシミシベキベキという不穏な音も聞こえてくる。
全身の痙攣が産み出す振動は座っているソファーの形を歪め、内部の骨組みを破損させていく。
余りの衝撃に手加減を忘れたハルトの一挙一動は着実に周囲へ破壊をもたらして行く。
「......私を笑うのは良いが......そろそろ落ち着いてくれんか?」
そしてひきつった顔のまま目の前の緩やかな破壊活動を止めようと声を掛ける国王。
「おっとすまん。で、薄毛を治したいだったな。」
「......ああ、何か知らんか?」
そして瞬時に素面へと戻るハルト。
先程までの大笑いが嘘のような切り替えの早さに呆気にとられる国王。
「いや、そんなもん治癒魔法で一発だろ? 生身を治したいんだからな。」
「いや、治癒魔法は薄毛には効かんぞ?」
「え? 効くだろ? 原理的に。」
「ん? そうなのか?」
「逆になぜ効かないと思った?」
「ん?」
「は?」
そして固まる二人であった。
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