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狂科学者の幼馴染みは恐怖する

 『ハル君? 繋がったよ?』


 目の前の俺にそう話しかけながら立ち上がる端末。

 勿論中身はユアだ。


 それに応じるように立ち上がるハルトそっくりの端末。

 これはハルトの体内にある魔法生物以外ではアクセスできない特注品であり、ハルトが素材から吟味して出力と強度を限界まで向上させた機体だ。

 他の端末にある出力制限もなく、常に全力を出せるように造られている。


 そのせいで魔力消耗が激しく、連続稼働時間に難があるが......まあ全力で動かなければいいだけの話だ。


 全力で稼働すれば5歳の頃の身体能力を再現できる程度の性能を出せる。

 現状最も性能の高い機体と言えるだろう。


 『全身の調子はどうだ?』


 そう聞きながら魔力充填用のケーブルを引き抜き、立ち上がるハルト。


 『本当の体みたい。......でもそんなに力が出ないね。』


 そりゃそうだ。

 今のユアは俺の『超回復』を得て超人的な身体能力を持っている。

 それを再現するには......現状の技術力では不可能だな。


 そこら辺は諦めてもらうしか無いとして、


 『じゃ、行くぞ。』

 『うんっ!』



 そして研究所の実験用広場に三番を呼び、自分達も向かっていく二名。


 

 『今日戦ってもらいたいのはこれだ。』


 ハルトが指差した方には、白い装甲に身を包んだ、細身の蜘蛛のような存在。


 『は......』


 そして固まるユア。


 『は?』


 どうした?


 『......ハル君』


 そして次第に震えだすユアの端末。

 大丈夫か?


 『どうした?』

 『ハル君......私......ダメ。これはダメなの。』

 

 ん?

 何がダメなんだ?

 

 『何が?』


 『私......蜘蛛はダメなの......。怖いの......』


 


 新事実発覚。

 ユアは蜘蛛が苦手だった。


 ......確かに手足は四本だが......見方によっては蜘蛛のようにも見えなくもないな。


 

 そうか......それは悪いことをした。

 どうせ暇潰しに思い付いたことだ。

 そこまで強要する必要もないしな。


 仕方ない。

 やって来た三番に『殺戮機獣(スロータービースト)』の訓練を丸投げし、ユアに近づく。

 



 『......大丈夫か?』


 正直虫が怖いとか言う感情は理解できんが......ユアにとっては来るものがあったんだろう。


 『......抱っこして。』



 おい。

 こいつは本当に甘えるのが好きだな。

 両手を広げて抱っこしてアピールをするユアに苦笑しながらも、

 『良いぞ。』

 

 そう言ってユアの端末を抱き締めるハルト。

 一見少年が無機物の人形に抱きついているように見えて微妙だが......ここには俺等以外いないしな。





 そして二人は学園の授業が終わるその時間まで、抱き締め合い続けたのであった。

 

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