狂科学者、実験がバレる。
「おっ、おっ。」
ハルトは興奮していた。
モルデモート一世につなげた義手を動かすべく、数日かけてモルデモート一世と一緒に魔力基板の調整をしていたのだが、モルデモート一世が少しとはいえ、とうとう義手のコントロールをつかんだのだ。
飢餓感に襲われているであろうモルデモート一世は、ゆっくりと義手を伸ばして、エサの皿をつかんだ!!
そのままゆっくり皿のヘリを指先に引っ掛け、自分の方へ引き寄せる。
そしてこれまたゆっくりとエサをつかみ、自分の口へ運んで見せた。
「やったなモルデモート一世!!」
一部始終をはらはらしながら見ていたハルトはたまらず歓声を上げる。
そして、
「ハルト......何しているんだ?」
なんとアランが部屋をのぞいていた。
「パパっこれ見て!!」
とハイテンションで自作の義手を見せるハルトに、アランは顔を引きつらせながら一言、
「あー......ペットに何しているんだ?」
と首にインターフェイスを取り付けられたモルデモート一世を指すアラン。
「えっ? ......あ。」
漸く脳が状況を認識したのか、バレた。やっべ、と言わんばかりの顔になるハルト。
親にはペットで実験していることを隠していたのだ。
「......とりあえず状況は説明してくれるよな?」
「......はい」
込められた圧力にハルトは屈したのだった。
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「......はあ、で、お前の研究の意義については分かったんだが......結局これは何なんだ?」
「さっきも言ったよ? それは義手だよって。」
ダディはおつむが足りていないのか?
「さ......え......」
「さ?」
「最初からそう言えっ!!」
「うわっ。」
びっくりした。
「言わなかったっけ?」
「......ハルト? お前な......さっきから義手の一言も出てこない上に、ずっとシンケイがどうのこうのとか、ジンコウ筋肉がどうのこうのとか訳わからない単語が出て来まくったせいで、要領がつかめなかったんだよ......。」
なるほど......そもそもとして『神経』や『人工筋肉』という名詞自体が意味不明だったと。
想定よりも遥かに歪で重症だな。この世界。
「ま、そういうわけでこれは腕とか足をなくした人達に代わりとなるものを作ってあげようっていう研究なんだけど、まさかぶっつけ本番で人様の体に手を入れるわけにもいかないからペットのモルデモート一世で実験していたってこと。」
それで成功したんだよね、と言いながらエサを差し出すハルトと、手は拘束されて動かせないので義手をうまく操って受け取るモルデモート一世。
「こういうのは事前に教えてくれ......心臓に悪い。」
疲れた声を出すアラン。
「分かった。それでなんだけど......パパは僕の研究に協力してくれる? それとも否定する?」
そう恐る恐るといった感じに問いかけたハルトに、アランは、
「いや......協力するさ。」
少し頬を引きつらせながらもうなずくアレンは、ハルトの
「大丈夫。流石にパパにまでモルデモート一世みたいな体を張った実験協力はお願いしないし、開発した魔道具の中で使えそうなものはあげるから。」
という少しズレたフォローに、命を張る実験をさせられる可能性もあったと気付き、盛大に頬を引きつらせた。




