狂科学者は乗っ取る
「はー......疲れた。」
そう言い、息を吐きながら立ち上がるハルト。
全身の間接を回して、軽くストレッチをしながら件の刺客達を眺める。
「やあ、はじめましてと言えば良いかな? まあ俺はお前等を知っているし、そっちも俺の端末は知っているだろうがな。」
まずは挨拶。
文明人として常識だからな。
そんな俺を理解不能なものを見る様に睨み付ける刺客達。
「......何のつもりだ。」
「ん? 勿論情報を吐いてもらうが......安心しろ。お前等が自主的に話すなんて最初から期待していない。洗脳して情報を抜き出すだけだ。まあ廃人になるだろうし、拷問といえば拷問かもな?」
「......我々に拷問しようとしても無駄だ......何?」
何やら覚悟を決めているらしいが......まあ
関係ない。
無駄だ。
どんなに口が堅かろうが、精神が物語の主人公並みにタフだろうが、
脳に直接手を加えられて抵抗できるわけがないのだ。
まあ、
安心しろ。
次に目が覚めた、その時には、
お前等は俺に忠実な死兵になっているのだからな。
そう内心でほくそ笑みながら、ハルトは手元のキーボード、そのキーを一つ叩く。
それは刑の執行であり、
強制的な生まれ変わりの処置、
その実行命令が出された。
哀れな刺客達の頭部にはヘッドギアの様な機器が取り付けられ、
首には鋭く長い端子が幾本も刺さり、
眼球には針が突き刺さって動かすことを禁止される。
いつの間にか感覚を遮断され、痛覚を感じないで済んだのが唯一の救いだろう。
しかし、彼らの味わう本当の地獄はこれからであった。
「「「「「「っーーーーーーー!!??」」」」」」
何故か口が上手く動かず、ただ喉から漏れる声。
眼球からはなんとも言えないが何処か吐き気を誘う、ウネウネと揺れ動く映像が流れ込み、視界から意識を離そうにも耳からは黒板を引っ掻いた様な不快な音が流れ込む。
そして脳にダイレクトに入ってくるナニか。
鍛えられた意志を踏みつけるどころか粉砕してくる強烈な不快感。
自分ではない誰かが意識に混ざり込んでくる。
視覚と聴覚から流れ込んでくる不快感で意識を乱されている上に、思考自体がぶつ切りにされているかの様に途切れ途切れ。
そんな状態でまともな思考ができるわけがない。
しかし意識を失おうにも刺激が多過ぎて失えないし、じわじわと少しづつ入ってくる何者かに主導権を取られる訳にもいかないので必死に足掻く。
自分が自分でなくなるような予感。
それは下手な拷問など話にならない程の苦痛であり、もし一瞬でも拘束を解かれれば己を守るために躊躇いなく自害する程の恐怖感だった。
しかし全身は拘束され、自害は許されない。
耐えられぬ苦痛もエンドレスで襲いかかってくる。
誰かの意識の浸食も進み、自分の存在の定義すら曖昧になってくる。
しかも人は休息無しに全力で動き続けられない。
それは脳であっても変わらず、どこかで無理が来る。
その一瞬。
脳が一時の休憩を得ようとしたその瞬間、
(あ゛ぁぁぁぁぁぁっ!?)
今まで水際で堰き止められてきた精神攻撃、その全てが雪崩れ込む。
思考を完全に掌握され、意識を失い、人格が消滅していく。
そして彼等はその記憶と人格、個人を構成する要素である全てを乗っ取られたのであった。
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