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狂科学者は引きずる


 首を浅くだが切り裂かれ、全身からも赤い液体が滴っている。


 ハルト自身は気付いていない様だが、強力な毒も仕込まれており、体内には既に毒が回っているはず。


 それなのに、ハルトは生きていた。

 否、生きていないのかもしれない。



 それ程に不自然な状態だった。



 切り口をよく見れば、生々しい筋肉の組織ではなく、細い繊維が千切れたスパゲッティの如く無数に覗いている。

 首を切られたはずなのに、さほど吹き出していない様に見える血液。

 

 先程まで普通の人に見えたのが嘘の様に無機質なその雰囲気は、完全に刺客達を圧倒していた。



 ......まあ刺客達は先程の電撃のせいで上手く動けないらしく、ピクピクと痙攣を起こしているだけだが。

 何人かは既に気絶してしまった様だ。


 

 そんなことにはお構いなしに、少しぎこちない動作で立ち上がったハルトは、徐に切り裂かれた喉に手を当て、

 『あ゛〜あ〜あっ......こうか? よし直った。」



 手で喉を少し弄ると、先程のラジオのノイズの様に酷いものからあっさりと戻る声。




 「......さて、獲るもん獲れたし、帰るか。」


 

 そう言いながら何処からともなく細いワイヤーを取り出し、次々と動けない襲撃者たちを捕縛するハルト。




 そして全身から血を吹き出している怪我人とは思えない程、軽やかな動きで歩き出した。



 ......引きずられた襲撃者達の顎をリズミカルに地面に打ち付けながら。



 

 ****


 全身黒ずくめでどこか煤けている襲撃者達を引き摺りながら王都の道を歩む血塗れのハルト。



 真昼間にも関わらず、軽くホラーである。



 しかし誰も声をかけられない。



 だって怖いから。

 明らかに傷だらけなのに、笑みを浮かべながら大の大人を数人気軽に引きずっていく少年。


 関わってはいけないオーラが滲み出ている。



 そんな感じに恐怖の視線を向けられながらもどこ吹く風で進むハルト。


 その足は淀むことなく動き続け、ある所で停止した。



 目の前にあるのはハルトの王都での拠点である、二階建ての一軒家。



 「何を吐いてくれるか、楽しみだな。」


 誰に言うわけでもなく発せられたハルトの言葉に、哀れな刺客達は震え上がったのであった。


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