狂科学者の助手、人を捨てる(2)
「......ふむ。」
「三番」の生命活動が停止したか。
しかし、魂が無くなるだけで他の状態は変わっていないはずなんだが……なんで生命活動まで低下するんだろうな。
目の前に横たわる、様々な人工物を埋め込まれた肉体から魔力が消え失せ、隣に置かれ、様々な計器と繋がれた「魂核」から再度発生する。
更に「魂核」から生身の脳から消え失せた脳波に酷似した波形が発生する。
それが示すのは、
―――実験成功―――
それも、魂の移行。
人のアイデンテティを定義付ける要素の一つを移し替えたのだ。
擬似的な輪廻転生とも言える。
まさに神の御技。
完全な人類へ近づくための第一歩。
前世で長年のテーマだった不老不死の実現だ。
何せ無機物の器が劣化しても取り替えれば良いだけなのだから。
まて、落ち着け、
まだ成功が確定したとは限らない。
十年近く続けてきた研究が大きな進歩を遂げたことに大興奮していたハルトだが、すぐに冷静になり、「魂核」の状態を調べ始める。
魔法生物による疑似神経回路は適切に構築されている。
擬似的な神経活動も見られる。
つまり何らかの思考は行えている模様。
後は、
「『接続』」
実際に潜って確かめるのみ。
ハルトはまた、精神世界に意識を飛ばしたのであった。
****
『ふむ、繋がるには繋がるか。』
この世界には複数人が繋がって互いの世界への認識を共有することで成立する世界だ。
つまり俺の世界を認識している者がいる。
そして俺もその相手の認識する世界を観測している。
今繋がっているのは俺と「三番」の移った「魂核」のみ。
つまり「三番」の魂が移った「魂核」に記憶を伴った意識が宿っているということだ。
しかしここには居ないようだな。
まあ、その程度の誤差は想定の範囲内。
己のイメージを強く意識することで「三番はここにいない」から「三番はここにいる」と改変する。
『あ、所長。いきなり風景が変わったっすけど、なんかしたんすか?』
するとすぐさま現れる「三番」
ほら。
『意識は無事移行できたか?』
『問題ないっす。いきなり全身の感覚がなくなって少々驚いただけっす。』
そうか。
『少し待て、すぐに新しい端末に積んでおく。』
『あざっす。』
そう約束してハルトは現実世界に戻ったのであった。
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