狂科学者の助手、人を捨てる(1)
真っ白い部屋に向かい合って立つ二人。
背の高さを見る限り、大人と子供のように見える。
二人は始め黙っていたが、背の低い方がおもむろに口を開いた。
「これからお前を更なる高みへと昇華するための実験を行う。咽び泣いて喜べ。」
どうやら背の低い方が立場は上のようだ。
その上から目線の言葉に質問を返す背の高い方。
「......ちなみに成功は確実っすか?」
「いや、確実に成功するかどうかはわからん。まあ成功しなかったとして最悪、お前が死ぬだけだ。世界は滅ばんから安心しろ。」
「ちょっ!? はあ......拒否権はあるっすか?」
「ない。」
「所長~」
そして泣き崩れる背の高い方。
「......ってそんなことに時間を食っていても仕方ない。やるぞ、『三番』。とっとと接続しろ。」
「いや、所長がしたいと言ったんじゃない......っす......いややっぱり何でもないっす。」
「分かれば宜しい。」
さて、俺も入るか。
「「『接続』」」
そして『三番』と『所長』二人の意識は繋がり、用意された空っぽの器、その中にある世界へと溶け出していったのであった。
****
精神世界に初めて入った『三番』が口を開いた。
『は~......これが例の"世界"っすか? 確かに夢の世界っすね。』
『楽しんでいないでとっととやるぞ。』
感心している様子の助手をせかすハルト。
『へいへい。』
輪郭が少しぼんやりとした二人の目の前に透明な画面が現れ、ハルトが少し操作をする。
『接続するぞ。』
『どんな感じに見えるんっすかね?』
『見りゃわかるだろ。』
そして現れる人影。
『......これっすか? 随分......のっぺりとした......顔? っすね。』
しかしそれは辛うじて人の輪郭をしているだけの、所謂『のっぺらぼう』であった。
『まあ元々「魂核」自体に己のイメージは無いしな。体格や思考パターンをお前用に調整しているだけで、元はただの入れ物だ。』
ユアの一件以降、魂の存在を掴んだ俺の研究は一気に進んだ。
完成間近だった魔法生物式人工脳を流用して情報の混沌を作り出す容器を作り、魂が適合できるよう本人の脳活動を参考にして調整を加える。
そして精神世界と繋げれば魂の''道''ができる。
それはヒトが生身を捨てる為の道であり、
更なる高みに昇るための階段でもある。
『取り敢えずさっさと入れ。中途半端に入ったら最悪、死ぬぞ。』
『へいへい』
そして人影と寸分違わず重なり合う『三番』。
それを見届けたハルトは、
『全接続解除』
現実の結果を見に戻ったのであった。
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