狂科学者は生身を捨てたい
「ハル君! 見て見て~!」
「......第三者視点で改めて見ると......中々すごいな。」
俺の魂がユアに混じって数週間、
ユアの魔力と身体能力は超人の域へと達していた。
拳を繰り出せば大岩に罅を入れ、鋼鉄を容易く折り畳み、数十メートルの垂直大ジャンプができ、魔力は常人の数十万倍。
それでいて外見は年相応の貴族令嬢なのだから詐欺だ。
幼少期のハルトとタメが張れるほどのスペックを手にいれたユアはハイテンション。
「やっとハル君に近づけた!」とかなんとか言いながら更なる鍛練を繰り返している。
全てはハルトに近しい存在へと至るため。
その執念はユアの精神的限界を超越し、驚くべき速度の成長を遂げさせた。
まあ大方俺の魂にあるらしい『超回復』が混入したんだろうが......
なんだか複雑そうな能力だし、分割又は複製したせいで問題が起きるかもしれんが......そこら辺はなにか起きない限り、なんとも言えんな。
ちなみに魂混合事件自体はばれていないが、ユアに起こった変化は既に学園に知られている。
何せ気を抜いた瞬間に学園の至るところを間違えて破壊するのだ。
俺がその都度飛んでいって直しているから問題になっていないがな。
一昨日も公爵から「うちの娘を改造しているんじゃねえぞ?」みたいな内容の手紙が届いた。
流石公爵家、耳が早いな。
そんなわけで現在、ユアは俺監督の元、力加減の訓練をしている。
跳躍したときに床を粉砕する、全力で走って人を轢く、剣の柄を握り潰す、うっかりペンを磨り潰す......等々、うっかりでも程度が洒落にならんからな。
まあちょっと練習させるだけだが。
最低限訓練した後は、やっぱり日常生活で慣れるしかない。
それでもぶっつけ本番よりは被害は小さくなるはずだ。
それにしても......
魂か......
偶然が重なって初めて触れたが......使えるな。
少し精神世界への理解を深めれば無機体にも魂を宿せるかもしれん。
そうなったら俺の野望まであと少しだ。
人間なんて虚弱な有機体は捨ててもっと便利な器へ乗り換えるのだ。
外見は人間だが、中身は別物......ターミ○ーターも夢じゃない。
それも無機体すら侵食する存在値の補正つきだ。
どんな結果になるか、非常に楽しみだな。
そう幼馴染みを眺めながら夢想するハルトであった。
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