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狂科学者のため息


 「......ハル君の......魂?」

 「具体的には俺の魔力と身体能力の一部がな。多少記憶も混じっているかもしれんが。......因みに先程渡した棒の材料は鋼鉄だ。」


 「え?」

 「まあ力加減はこれから覚えていけば良い。取り敢えずは注意しながらゆっくり動くようにな。」


 「ハル君の......魔力?」

 「気付かないか? お前の魔力は目覚める前の千倍ちょっとになっている筈だ。」

 「......増えてる。」


 軽く魔力を放出して確かめるユア。

 

 「後......まああれは事故のようなものだが、あの世界で接続が切れる直前に飛び込んでこないように。......そのせいで死にかけたのお前だからな? まあ魂は俺に溶け込んでいたようだが。」


 「ハル君に溶けてた......!?」

 「そ、お前の記憶や感情が流れ込んできた。」



 何やら驚いている様子のユア。

 表情筋が凍りついているぞ。


 「何をそんなに驚いてる?」

 「......もう一回やって。」


 は?

 「何を?」

 「だって......ハル君に溶けてたんでしょ? ハル君と魂でくっついたんでしょ? ......ねえ、もう一回やっても良い?」


 「ダメだ。」

 ......何を言っているんだこの幼馴染みは?

 第一リスクがでかすぎる。

 あれ自体が偶然の産物だしな。

 それより死にかけていた自分を心配しろ。



 「え~」

 「俺の魂の一部をやったんだからそれで我慢しろ。良かったな、一部だけとはいえ、完全にお前の物だ。」

 「......うん。大事にする。」


 どうやって?

 何てことは聞かない。

 俺も少しは空気が読めるようになってきたからな。

 

 「......あ。」

 「今度は何だ?」

 「ハル君の魂と結ばれたってことは......結婚成立? もう夫婦?」

 想像でもしたのか口元を緩めてニマニマするユア。



 ......なんか今日は何時にも増してポンコツだな?

 あれだけ悶死しそうになっていた言葉も平気そうだしな。

 これが副作用か?



 「......まあ一応そんな状態にしてしまった責任が無いとは言えないが......お前、明らかに喜んでいるだろ?」

 被害者本人が喜んでいるなら責任というものは成立しないような気がするんだが。



 ......まあいい、


 「それで、現状に対して何か質問はあるか?」

 「ハル君は私のこと、好き? 愛してる?」


 「以上で質問を終了させていただきます。」



 幼馴染みの若干ポンコツな姿にため息を吐く、ハルトであった。

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