狂科学者は安心する
『......無事入れたか。』
精神世界へ潜ったハルトはイメージでパパッと鏡を作成、己を観察しだす。
別にハルトはナルシストではない。
だが周囲にユアは見えないので自分に溶け込んでいるのではないかと予想したのだ。
どんな形で溶けているのかは皆目見当がつかないが、まあ見てみればわかるだろう。
そんなノリで自分を見つめると、
『これか? 服が邪魔だな。』
何やら己の腹部から下半身にかけて不自然な膨らみがあることを発見。
今までなぜ気付かなかったのか不思議なほど肥大化している。
でも服が邪魔で見えないので取り敢えず全裸になるハルト。
『......見つけたぞ。』
そこにあったのは幸せそうな顔をしたまま目を閉じ、半ば俺と溶け合っているユアがいた。
背中から頭が突き出て、下半身が腹から生えている。
『おーい。起きろー。』
取り敢えず意識を呼び起こしてみる。
だが起きない。
ならば物理的に切り離すまでだ。
己のイメージを強い集中で改変し、腹部を削る。
ユアの魂に損傷があっても補充できそうな気がするので、気休め程度だが削った部位はユアに形や外見を整えて譲渡する。
さらに自分の体もイメージで復元すれば分離完了。
現状意識に変化は感じられないので、俺の魂にも問題はないようだ。
記憶はリアルタイムでバックアップを取っているし、まあ大丈夫だろう。
しかしまだ目を覚さないユア。
仕方ないので少し距離を置き、
『接続解除』
夢の世界から抜け出す。
「これで良し……ん?」
現実に戻り、すかさず脳波を見れば、先程まで活動を停止しかけていたのがまた再開している。
どうやら俺の対処は正解だった様だ。
まだ目覚めてはいないが、夢を見ているのだろう。
しかし……
「魔力が……どういうことだ?」
先程まで平均的な魔法使いの数十倍程だったユアの魔力量が今では軽く数万倍になっている。
逆に俺の魔力は確かにその分減っている様だ。
まあ桁が八つほど違うので変化自体は微々たるものだが。
しかし理由は心当たりがある。
あれは本当に俺の魂で、その欠片をユアに分けることで存在値の譲渡をしたのだろう。
俺自身に何も影響がなかったのは幸いだ。
これで精神に変調でも来していたら狂った俺が何し出すか分かったもんじゃない。
ユアもこれで問題なく目覚めるだろう。
多少記憶や全身の感覚に違和感は残るだろうが。
……まあ、
ユアの魂が元に戻って何よりだな。
と、ハルトは安心するのであった。
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