狂科学者の見ているモノ
『接続解除』
一通り精神世界の雰囲気を確かめたハルトは、引っ付くユアを撫でながら二人の繋がりを切った。
「......ふう。なかなか新鮮な体験だったな。なぁ?」
意識を保ったまま夢の世界を旅した気分だ。
「......。」
同意を求めて横を向くと、なぜか下を向いてぶつぶつと何かを呟いているユア。
髪の間から覗くユアの顔は真っ赤になっている。
大方、夢から現実に引き戻されて己の言動にショックを受けているのだろう。
恐らくだが......ユアは通信に慣れていなかったのだろうな。
脳から直接意思を取り出すその特性上、慣れないと考えていることが駄々漏れになるからな。
あのふわふわとした意識では俺も失言しかねない。
しかし、日常的に言葉の裏で俺へのラブコールでも叫んでいたのか?
そう考えないと説明がつかないほど円滑な口調だったんだが。
まあいい。
ユアから俺がどんな風に見えていたのかを見てみようじゃないか。
「ユア、データファイルを貰うぞ。」
一言断り、魔法生物に仕込まれているマスター権限でユアの魔法生物を遠隔操作、データを取り出す。
精神世界で撮ったイメージを一枚複製し、取り込み、俺の中で適切に展開する。
どれどれ......
「......誰だコイツ?」
ユアの中にある俺のイメージが反映された俺の姿。
それはかなりの修正を加えられ、本人とは似ても似つかぬイケメンさんになっていた。
細く、死んだような目は鋭い切れ長な眼差しへと変換され、
超回復によって全く肉の付かない細身の体躯は引き締まっている。
なぜか周囲にキラキラのエフェクトも見えるな。
まるで前世の乙女ゲーの攻略対象......実際にやったことはないがそんな感じだ。
俺への好感度をカンストさせているせいで変な補正が入りまくっているな。
まあユアの言動がマジだったという証明はできた。
そろそろ悶死しそうなユアを現実世界に引き戻すか。
「ユア、そろそろ戻ってこい。」
「......ハル君は私のこと、嫌い?」
揺すって声をかけた瞬間、ローテンションでそう聞いてくるユア。
嫌いではないな。
むしろ好感度自体は高めだ。
俺の側でうろちょろしている姿は見ていて面白いしな。
「いいや。友人としては好きな部類にはいる。......さっきのは驚いたがな。」
「『友達』として? 私は『女の子』じゃいけないの?」
俺にとっての......か。
これは参ったな。
俺にはその辺の経験がない。
前世含め、初恋も恐らくまだだ。
一応性欲自体はあったが......思春期の頃も周囲が猿みたいに自家発電に勤しんでいるのが不思議なくらいに薄かったしな。
今俺から見たユアは、合鴨の雛だ。
貴族教育を受けて大分取り繕えているが、俺の後ろをうろちょろしていた頃と本質は変わっていない。
そんなユアには......一種の愛着も芽生えている。
あり得ん話だが、こいつが事故で下半身を失ったとして、無償で全て治してやるぐらいにはな。
俺の持つ技術の全てを躊躇い無く提供するだろう。
だが間違いなく、『女の子』としては見ていない。
とはいっても......
「お前が将来の相手だとして、文句はないがな......少なくとも他の奴よりは楽しそうだ。」
特に拒絶する理由もないというのが現状だ。
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