狂科学者の拒絶
「交渉役って......いや、君は状況をわかってそれを言っているのかい?」
何故か嫌そうにしている王子。
「なにか問題が?」
「あのね......王家から注目を浴び、フィーに愛されている君だよ? 王家が取り込もうとしているのに僕が追い返せるわけないじゃないか。あとで父上に説教されたくないしね。」
ふーん。
成る程、グルってわけだな。
ちょっと前に食堂でなにやらブラコンのような発言をしていた気がするが......今はどうでも良い。
「知らん。やれ。」
王家の事情など知らんわ。
「......本当に僕に交渉を任せていいのかい?」
「......ユアはこんな感じだしな、俺も今手を離せん。」
そう言ってまだコアラの如く抱きついているユアの頭を撫でる。
「はあ......わかったよ。」
諦めたのか、ため息混じりにドアの方へ歩いていく王子。
王子はドアを開け、
「フィー、入っていいよ。」
「こんにちわハルトさんっ!」
王女がユア並みのハイテンションで突入してきた。
「......おい、入れるなと言ったよな?」
「......あくまで、『交渉』だからね。失敗しただけさ。」
ハルトが半目で王子を睨み付けるが、王子の方は何処吹く風。
「ハルトさん?」
「あ?」
「私もこの『部活』に入れてください。」
「帰れ。」
「すみません、聞こえませんでした。」
いや本当に帰ってくれ。
ハルトは願うが、王女が謎の難聴を発揮し出す。
「後......」
「帰れ。」
「ユアさんみたいに抱き締めてください。」
「は?」
王女を抱き締めようとする平民が何処にいる?
普通せんわ。
というか帰れ。
「拒否する。」
「ユアさんは抱き締めているのに私はダメなんですか? 私の全てはハルトさんの物なのに......。」
いやちょっと待て。
随分と好意が重いな!?
「そもそもあんたとは知り合いだが、付き合いがない。互いに互いを知らないだろうし、誤解もあるだろう。ユアは幼馴染みだからな、訳が違う。ということで帰れ。」
そう言って王女の発言を適当に流していると、
「......フィー様は帰ってください。ハル君は私の物なので。」
俺に抱きつきながらきっぱりと言いきるユア。
おいおい、俺は誰の所有物にもなりたくないぞ?
「ユアさん? ここは仲良く分け合いましょう?」
ついでに分けられる物でもないな。
「嫌です。」
王女の提案らしいなにかをきっぱりと拒否するユア。
「仕方ありませんね......ハルトさん、王城にいらっしゃいませんか? 一緒に甘い生活を......」
話を聞かないどころか段々発言がぶっ飛んできている王女への応答はもちろん、
「拒否する。」
何が悲しくてわざわざ拘束されないといけない。
「ハル君、私はハル君を縛らないよ?」
全く、良い幼馴染みだ。
俺のことをしっかりわかっている。
そんなユアの頭を追加で撫でるハルト。
「......あ......ハル君。」
愛しのハル君に撫でられ、甘い声をあげ、溶けそうな顔をしているユア。
「......今日はここまでにしておきます。......ですがハルトさん、覚悟してくださいね?」
ハルトとユアの間にある強い繋がりに軽く嫉妬を覚えつつも、状況の不利さに漸く諦める王女。
そしてハルトはというと、
「そうか、帰れ。」
相変わらずの反応だった。
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