狂科学者の対応
「やあ......ここがあの『部室』という奴かい?」
ハルトの作業をユアが楽しげに眺めている。
そんな延々と続きそうな状態に入ってくる王子。
「おう、適当にしてくれ。俺は忙しい。」
思い付きで始めた人工脳作りが思ったよりも楽しかったようで、王子の発言に適当に返すハルト。
時折手元のキーボードで何やら打ち込み、あーでもないこーでもないと頭をひねっている。
「......いや、この部活は魔法の研究とかをする場所なんだよね? 少なくとも僕にはそう聞こえたんだけど。」
そして早速突っ込んでいく王子。
「ん? 研究は各自で勝手にやれば良いだろう?」
「......僕は別に錬金術師でも何でもないただの王子なんだけど......。」
「......そういえばそうだったな。」
と、今更だが気付くハルト。
「だが、本当に適当でいいと思うぞ? 魔法の開発でも俺の魔道具製作の観察でも、俺の研究内容でもな? 質問には可能な範囲で答えてやる。どうせ国王辺りから言われているんだろ?」
「......なんのことかな?」
「ここは王立の学園、国王の指示には逆らえん。研究活動の成果はあってないようなものだ......違うか?」
しらばっくれる王子に畳み掛けるハルト。
「......君は本当に頭が回るよね......。」
「あんだけ興味持たれているんだ。その程度容易に想像つく。」
身も蓋もない言われ様に苦笑いする王子。
「......それじゃあその言葉に甘えさせてもらうとしようか。」
「お前程度に理解できるかな?」
この部屋の全機能は論理魔法陣で制御されているため、目視できる魔法陣は一つもない。
「ははっ......お手柔らかに。」
挑戦的なハルトの視線を柔らかく流す王子。
「......ん?」
何かに気付くハルト。
「おい、お前の妹がドアの前で待ち構えているぞ。」
なんと部屋の外にラファエラ王女がスタンバっている。
設置したカメラアイから見た感じ少々呼吸が荒いな。
おまけに心拍数も上昇している模様。
そして、
「......ねぇ......ハル君?」
室温が数度下がったと錯覚するほどの冷たい声が響いた。
幼馴染みの怒りの発露に驚くハルト。
ハルトはユアが怒っているところを見たことがない。
ユアはハルトに好かれるため、全力で笑顔を心掛けてきたのだから当然と言えば当然だが。
「......何だ?」
質問する俺に、ユアはゆらりと立ち上がり、ゆっくりと近付いてくる。
「......お引き取り願って?」
何だ、そんなことか。
「当然だろ? ストーカーはお前とそこの王子で十分だ。」
「えっ? ......ハル君っ!」
ハルトの言葉に、心底嬉しそうな表情で抱きつくユア。
第三者である王子の目の前で抱きついてくるとは相当嬉しかったのだろう。
俺にはどこが嬉しかったのかわからないがな。
まあ、取り敢えず
「取り敢えず王女にはお引き取り願いたいんだが......お前あいつの兄だし、交渉役は任せた。」
俺はユアを撫でながら王子にそう言った。
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