狂科学者の部室
学園内に研究場所を確保した後のハルトは素早かった。
学園長をあれやこれや説得してそこそこ広めの部屋を確保、支部の従業員を総動員して機材の運び込みを行ったのだ。
そしてカーボリウムで頑丈に補強されたドアには『魔科学研究部』とかかれたプレートが下がり、魔力の波長を記録されている者以外は開けることのできない無駄に高性能なセキュリティシステムが設置され、
二日と経たない内に学園内に小規模の要塞が出来上がっていた。
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「さて、と。」
軽く要塞と化している部室に運び込まれた手術台へ横たわる上裸のハルト。
慣れた治癒魔法の操作で前回同様胸骨をむき出しにする。
そして横に設置した義腕と上に設置した義眼を駆使して己の胸骨を覗き込めば、
「......む、成功したか。」
そこには特有の色を残しながらも、骨膜と血管に覆われ、周囲と融合し、立派な骨と化しているチタンだったものがあった。
ハルトはそれを義腕に持たせた道具で削り出し、治癒魔法で空いた穴を修復、服を着る。
服装を整えてから改めてこの骨になったモノを観察すると、
「......やはり生命活動が確認できるか。」
その塊もまた、生命の特性を持っていた。
周囲の素材を取り込み、自身を破壊して、再構築する。
それは骨の特徴であり、同様であるこの組織もまた、ハルトが創り出した人工の『骨』である。
「ま、研究はもう少し種類が揃ってからだな。今あるデータではさっぱりわからん。」
そうぼやきつつ己の体内と同様になるよう調整した培養液に放り込む。
そして再度手術台に横たわり、今度は数ヵ所にチタンを埋め込む。
これで数日待てばそれなりのデータが得られるだろ。
しかしそれまでは暇だ。
手持ちぶさたになってしまったので適当に魔法生物を使った人工脳を作っていると、
「ハル君!」
「おう、来たか。」
「うん......って結構改造したね。この部屋。」
ドアを開けた瞬間、目に前に広がる異様な光景に驚くユア。
「まあな、嫌いか?」
首を横に振るユア。
「ううん......なんか、落ち着く。」
結構な時間を俺の研究所で遊んできたからな。
向こうと雰囲気が似ているのが懐かしいんだろう。
「ま、向こうと同じ感覚で寛いでくれ。なんかの研究がしたかったらしてもいいぞ? というかしてくれるとありがたい。」
俺の研究はそこまで大っぴらに出せる代物ではないからな。
隠れ蓑になる成果は必要だ。
「じゃあ......ハル君を眺めてる。」
そして俺の作業......いや、主に俺をじっと見てくるユア。
「俺を眺めているのがそんなに楽しいか?」
「うん。」
相変わらず不思議な奴だな。
俺の何処が良いんだか。
顔の素材は良いらしいが......それも見飽きているだろうし。
相変わらず鈍いハルトであった。
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