狂科学者の異変
「あ゛~......。」
寮のベッドにダイブしたハルトは呻いた。
「......ちとはっちゃけ過ぎたな。これからは少し自制するか。」
対外的には少し問題があったかもしれないし。
さて、
「メンテするか。」
『魔法殺し』ハインツに対抗するために組んだプログラムは急造だったため結構荒い出来だった。
そのせいで無駄も多く、要らぬ負荷を与えてたからな。
変な損傷がないか調べるためにも多少のメンテはしておこう。
そして耳の後ろ、頭蓋骨に密着している筈のMOを取り出すため、指を当てて魔力を流す。
こうすることで治癒魔法が連続発動し、一滴の血も出さずに取り出せる。
「ん? あ? 外れない?」
......筈だった。
「......どう言うことだ?」
補助演算機能は残っているから魔法陣回路自体は残っている筈だ。
つまり必然的に摘出用の魔法陣も生きている。
しかし取り出せない。
......はあ、
「『自己診断開始』」
そう呟き魔力で己の全身を精査、内蔵や骨格、血管や神経の3Dデータを作成する。
そして眼球内に投影、耳の後ろを良く見ると、
「......融合、しているだと?」
そこにあったのは、
神経が走り、
脈打つ血管に覆われ、
それ自体もまた脈打ち、
頭蓋骨に半ば溶けるように存在する、元MOがあった。
僅かだが骨に酷使した生命活動が伺える。
血液の組成も僅かに変化しており、全身がソレに、僅かだが歩み寄っていた。
表面にはしっかりと魔力の通った回路が視認できる。
......こんな現象は改造組には見られなかった。
考えられる可能性は......
「やはり超回復か。」
それ以外に考えられない。
これから推察できるその機能は、
肉体の形状を保ちつつ、外部からの即死を除くあらゆる負荷に対して自動的に物理的、魔力的に進化、適応すること。
恐らくこれにも『存在値』が関わっている。
存在値は肉体のポテンシャルを決める女神のシステム上の所謂『要素』だ。
それが強大であればあるほど細身でも人外の怪力を生み出しうる。
おそらく鉱物などにも『存在値』があるのだろう。
ドラゴンの鱗も本人の『存在値』の上昇に伴って強靭になる。
つまりだ、
『存在値』の上昇ができる種は体内の......いや、体と認識した部位に『存在値』を与えられるわけだ。
そしてMOは俺の身体の一部となり、『超回復』で無機体にもかかわらず物理的な変異を遂げ、今に至ったのだろう。
それはつまり、
機械と生身の融合。
「ははっ」
なんと甘美な響きか。
俺の探し求めていたものにもうすぐ手が届く。
「はははははははははっ! すばらしいっ。」
遅々として進まなかった研究がこれでまた大きく進んだ。
長い間掲げてきた一大テーマ。
『完全なるヒトの創造』
それに、ハルトはまた一歩近づいたのだ。
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