狂科学者、義手を試作する。
「水よ、対象を巡りて、修復せよ。」
首筋に針を刺された哀れなモルデモート一世に、水属性の治癒魔法をかける。内容がいまいちつかめない詠唱だが、これで微細な傷は治ってしまうのだ。地球の発達した文明でも確実にはできない神経修復を一発で成功させるこの魔法、謎すぎる。
疑問はひとまず置いておいて、手ごろな紐を加工した魔力基板を収めるバックパック的なものをまだ寝ているモルデモート一世に装着し、再度拘束する。
モルデモート一世が起きるまでの間に、黙々と作業をするハルト。
鉄インゴットの一部を適当な大きさの骨格パーツにに加工し、組み立てる。
それが終わったらゴムを薄く延ばして風船のようなパイプを作り、表面に縦方向でびっしりとアラクネの糸を癒着させる。そして内側に少しの魔水を入れて、圧力感知の魔法陣を刻んだ鉄板で蓋をする。仕上げに両端へ腱代わりの糸を繋げば魔力駆動型人工筋肉の完成だ。
いくつか大小さまざまな人工筋肉を作って骨格に取り付け、数か所に圧力感知の魔法陣を刻み込んだ鉄板を配置。動力源として魔石も数個取り付ける。
仕上げに、神経代わりにアラクネの糸で組み込まれた、魔法陣一つ一つと新しい魔力基板を接続する。
「いよっし!!」
出来たーと頭上に機械式の腕を掲げるハルト。
それは三本の指を備え、手首と肘、肩にあたる関節と魔石というエネルギーパックを備えた簡易版の義手だ。魔力基板を通して使用者の神経活動を融合させた魔石で増幅、魔力の信号として受け取り、動作し、その感覚信号を雷属性の魔法陣が電気刺激に変換して返す割と高性能な義手である。
「フッフッフ......」
ハルトの企みはまだ止まらない。




