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狂科学者の生徒(2)

 「次! ウェルマニア王国先鋒、ユーフォリア·メルガルト! 対するはエルドルリア王国中堅アドルフ ・ベルガー!」


 ユアは先ほどと同様、全身に魔力を巡らせるが、アドルフの方は少し身構えただけで何もしない。


 「双方、用意!」


 そして空気の緊張感が高まり、


 「......始めっ!」


 解放される。


 「『雷竜よ! その身を捩り、贄を穿て!』」

 「っ!?『避雷結界』」



 嫌な予感にユアが雷属性特化の結界を張れば、青白い雷光を散らしながら流される雷の矢。

 中々の反応速度だ。ハルトの訓練はしっかり身に染みていたらしい。


 そして、


 「ぜあぁぁぁぁぁぁっ!!」

 と力強く踏み込むアドルフ。

 身体強化がかかっているのか、剣を抜きながら急激な加速でユアに迫る。

 並の人間であれば対応出来ないまま敗北しているだろう。


 しかし、


 ユーフォリア・メルガルトは他でもない、かのハルトの『生徒』だ。

 理不尽なまでの速さで行われる訓練により、高速戦闘によって慣らされた動体視力と状況判断能力は余裕を持ってアドルフの突撃に対応する。



 「『暴雷攻性結界』」

 「無駄だぁっ」

 振り抜かれる剣に纏われている魔力が結界を削るが、

 「それは私の言葉っ。」


 そう、アドルフが結界を破ろうとしてくることは折り込み済みだった。

 狙いはその先



 接触した瞬間だ。


 アドルフが何かに気づくと同時に、

 バンッという爆発音と共に、膨れ上がる青白い光。


 これが攻性結界の特性。

 そのコンセプトは―――カウンター攻撃―――


 二重の結界内に閉じ込めた荒れ狂う膨大な電子が、外部からの破壊によって作られた穴―――即ち攻撃してきたモノ―――へ一極集中する。


 そして食らった者は感電して行動不能になる。


 まあ最高出力の結界であれば感電程度では済まないが。

 


 そして本日の被害者であるアドルフはというと、



 「......。」

 アニメのような見事なアフロヘアになって気絶していた。

 皮膚もちょっと焦げている。


 本来なら雷魔法からの突撃、その後にとどめの一撃に何かという戦闘スタイルで追い詰める予定だったのだろうが、生憎ユアの攻性結界は特別性だった。

 最後の何かを出す間もなく迎撃されてしまったせいか、どこか煤けているように見える。


 「勝者ッ、ユーフォリア·メルガルト!」

 

 観客席からの歓声が響く。

 ウェルマニア側からは称賛の声が、エルドルリア側からは感心と自国の選手に不満を漏らす声が響く。



 そして、

 「......君の幼馴染みは強いね......。この後はあの『魔法殺し』だし、僕の出番は無いかな?」

 「おう、俺が直々に教えたからな。」

 「ユア君はきっとこの世界の誰よりも魔法の先生に恵まれているね。」

 

 かもしれんな。

 「ま、尻拭いはしてやるから安心して逝ってこい。」

 「その口ぶりだと......ユア君が次に負けるって決まっているようだね?」

 「まあな。」


 そう言ってハルトは視線を相手の陣営へ向ける。

 二名が脱落し、そこに立っている黒髪の人物は十中八九大将である『魔法殺し』。

 

 試合の前から様々な方法で観測を試みているが、全ての視覚センサーが無効化された。

 魔法が効かないというのは本当らしい。


 本人の表情に変化はないので無効化は意識的な物ではない模様。


 つまり無意識に魔法を迎撃できるわけだ。

 本人は物理的な防御と攻撃以外に思考を割かないで済むので、身体強化すればさぞ強くなるんだろう。


 魔法で超火力を叩き込むことが得意なユアにはだいぶ相性が悪い。

 おまけに今は連戦で魔力を消耗し、万全とは言えないしな。


 ま、いい経験だ。

 全力で戦って、完璧に敗北してみるが良い。


 幼馴染み兼生徒の敗北を確信し、それでも応援するハルトであった。

 


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