狂科学者の過激な戦略
「......なんだ? 眠そうだな? 明日は試合だ、しっかり体調は整えておけよ?」
「......なんの前触れもなく呼び出す君には言われたくないけど......まあ肝に命じておくよ。」
そうか。
やたら欠伸を連発している王子から目を離し、ユアの方を見れば、こっちは寝起きとは思えないぐらいぱっちりとした目をしている。
先程王子に言ったが、明日は交流試合本番。
それに向け、戦略を共有しておこうと思ったので、二人を呼び出したのだ。
「......で、その戦略とやらを聞かせてくれないかい?」
「まあ焦るな、そんなに複雑なものではない。」
本当にシンプルだ。
「大怪我はしないように気を付けろ。もし怪我しても治してやるから、安心して全力で逝ってこい。残った相手は全て俺が始末する。以上。」
これだけだ。
「......それはまた大雑把な戦略......? だね......。」
「こうすればお前らにも出番はあるし、勝利は間違いない。」
「普通はそうなんだけどね......例の『魔法殺し』は大丈夫なのかい?」
「大丈夫だ。いざとなったら魔法なしの肉弾戦であの世の一歩手前まで送ればいいだろ。」
「か、過激だね......。まあ君がそういうのならば間違いないんだろうけど。」
そうか?
あ、そうだ。
「後もう一つ。殺さない程度にだがこの一ヶ月で教えた最高火力を連続で叩き込め。手足の一本は吹き飛ばす勢いでな。容赦はするなよ?」
相手の理解が追い付かない内に圧倒しきれば此方の勝ちはさらに揺るぎないものになるからな。
それにルールには相手方が行動不能または降参するまで殺さなければ何でも有りと書いてある。
向こうが降参する前に大ダメージを与えるのだ。
「......一応今までの交流試合を王族として見てきてはいるんだけど......そんな過激な戦略はなかったと思うよ? 君が入ったのがこちらの学園で本当に良かった。」
「安心しろ。もし苦情があったら『二術院』謹製の義肢か、本物の四肢でもくれてやる。」
最近新たな治癒魔法『再生魔法』を開発したしな。
何も難しいことはしない。
本人の体細胞をスキャンして同じ細胞で再生したい構造体を立体構築するだけだ。
スパコン数百台分のマシンパワーを持ってようやく実現できたがな。
ただ義肢の方がメンテナンス代など継続した利益が美味しいので再生の方はバカ高くしている。
一キロ分を再生するのに一千億レア程取るのだ。
まあまず大物貴族でも手が出ない値段だな。
「ハル君、私が怪我したら治してくれるよね?」
「無論、頭さえ無事だったら両手両足が吹き飛んだとしても治してやる。」
おい、そこでなぜ嬉しそうな顔をする?
「まああんだけ言っといて何だが、無理だと思ったら安心して退場しろ。外野が煩かったら俺が黙らせる。」
「......どうやってだい?」
「こうやってだ。」
瞬間、ハルトを中心に迸るプレッシャー。
しかしすぐに引っ込む。
「納得か?」
「納得だよ。本当に慣れないね......これは。因みにユア君は何で平気なんだい?」
そういえばそうだな。
そしてユアに目をやると、
「ん? えっと......ハル君だから怖くない? ですね......。」
「ああ、成る程。」
え? 今ので理解できるのか?
俺はもちろん理解できなかった。
何故『俺だから』怖くないという理由が成り立つのか。
ま、
「何はともあれ、後始末は任せろ。全員圧倒してやる。」
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