狂科学者の幼馴染み、壊れる
学園長に呼び出された日の晩、
ハルトは久しぶりに頭をフル回転させていた。
その内容は勿論、件の『魔法殺し』である。
魔力の属性色が見えない。
あらゆる魔法を無効化し、肉弾戦に持ち込む。
本人は身体強化を使えているので魔力自体はある模様。
魔力の属性色が見えないため、内包魔力量は未知。
それはハルトにとって、久々に見る『未知』であった。
この世界に生まれ、最初の『未知』は世界であった。
魔法、金属、存在値、能力、全てが未知だった。
それでもハルトは仮説を組み立て、検証し、世界を学んできた。
大体のことは理解できたが、この世界にはまだ未知が眠っている。
地球でもあった。
確固とした証拠に基づくものからオカルト紛いのものまで。
宇宙人は存在するか?
我々は天才の作った仮想現実の住人なのではないだろうか?
果たして平行世界はあるのか?
時間の逆行は本当にできない?
ブラックホールに入ったあと、情報は保存される?
ビックバンとは何か?
誰も真偽を断言できない未知。
真偽を断定できないため殆どの者が思考停止せざるを得ないその領域だが、人はそこを開拓するための素晴らしい存在を生み出していた。
『学者』
それは真理を探究し、人類の叡智を広げる存在。
そしてハルトもまた、『科学者』であった。
天性の好奇心を持つハルトにとって、『魔法殺し』という未知は解析対象であり、その結果は己の血肉とし、応用する材料である。
故に、
楽しんでいた。
口角に喜びを滲ませながら視界の画面を操り、解析用のアルゴリズムを組む。
観測できないモノを観測する手段を考察し、検証し、組み込む。
想像の限りを尽くし、無数の可能性を脳から捻り出す。
『未知』を前提に、それに対応するモノを考案する。
それは思考のゲームであり、ハルトは非常にそれを愉しんでいた。
ベッドの上に横たえた体は一切動かさず、感覚を切り、脳だけを全力で回転させていた。
そして、
コンコン
「......ハル君? どうしたの? もう昼だよ?」
「今日の訓練は何をするの? いつも通りのメニューで良いの?」
「ねぇ、起きてよ~。」
ユッサユッサ。
「......えっ? 冷たい......え? そんな......ハル君が......死んじゃった......?」
「......ん? は? もう昼!? そして何でユアが......ここに?」
「ハル君ッ!!」
「のわっ!?」
「ハル君だ......ハル君だ......ハル君......ハル君ハル君ハル君ハル君ハル君ハル君ハル君ハル君ハル君ハル君ハル君ッ」
「......何があった......?」
幼馴染みのユアが壊れた。
この後ハルトが無茶苦茶困惑したのは言うまでもない。
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