狂科学者の敵?
試合に向けた訓練が始まって二十数日が立ち、ハルト達は学園長室に呼び出されていた。
「ふむ......どうやらわしの見立ては間違っていなかったようじゃな。ところで貴様。」
「なんだ?」
「そっちの王子はどんな感じじゃ?」
「それなりに。」
思い付く限りの知識を総動員して鍛えたんだ。
それに食いついてきた二人は結構な成長を遂げている。
「......。」
「えっ!?」
ガンッ
「......確かに腕は上がったようじゃな。反応速度が段違いじゃ。」
この脳筋メス年齢詐称ゴリラババアは何も変わらなかったようだがな。
何が起きたのかというと、
単に身体強化で執務机越しに王子へ拳をを叩き込んだだけだ。
んで王子はボソッと詠唱し、結界を張ったと。
一応この国の王子だしな。
殴りかかっただけで十分事案のはずなんだが。
「で? まさかこいつを殴るために呼んだわけでもあるまい?」
「無論、そうじゃ。」
本当か?
実はただ殴りたかったんじゃないのか?
何せメスゴリ......
ガンッ
突き刺さる拳。
そしてそれを微動だにせず顔面で受け止めるハルト。
「おい貴様、さっきから失礼な思考を垂れ流しすぎじゃ。」
......あ、口に出てたか。
最近魔法生物のせいで思考と発話の感覚が時々混じるんだよなぁ......。
それより、
「それより重要な話とやらが有るんじゃないのか?」
「......そ、そうじゃったな......忘れていたわけではないぞ?」
絶対に忘れていただろ。
「で?」
「......試合の相手になる向こう側の二年生の情報が入ったんじゃ。どうやらあの、『魔法殺し』が出るようじゃな。」
いや、誰だそいつ?
「説明求む。聞いた感じ魔法が何らかの理由で効果を発揮できないようだが?」
「その通りじゃ。奴は生まれつき魔力の属性が無くての、将来は暗いと言われていたんじゃが......去年新しく魔法を封じる魔法を開発してな。最近飛行魔法を習得した貴様といい、才能に恵まれたんじゃろ。」
「ほう。」
魔法を封じる魔法ねぇ......。
それよりも気になるんだが、
「属性がないだと?」
「うむ、そこが問題じゃ。奴が何をしているのか観測できんのじゃ。ただ魔法を無効化できるだけなのかもしれんし、そうじゃないのかもしれん。そもそも魔力が見えないのじゃ。」
「魔力が見えない?」
「無属性にすらある属性の色がな。本人は身体強化が使えているようじゃし、魔力自体はありそうじゃがの。まあお主は強大すぎてもはや見えんのじゃが。」
......成る程。
「戦闘スタイルは?」
「魔法を封じて肉弾戦に持ち込むようじゃ。まあ今までの話が真実であれば妥当じゃな。」
確かにな。
てか、
「おい、試合まで後何日だ?」
「五日じゃ。」
オイ。
「大丈夫じゃろ。何せあ奴のお墨付きじゃし。」
あ奴と言うのは恐らくレント叔父だろう。
「貴様は純粋な身体能力も化け物のようじゃしの。そっちの二人は倒れても想定内じゃ。」
成る程。
確かにこの俺の殴りは一撃でも音速機の突撃並みの威力を叩き出す。
おまけに皮膚は刃物すら弾く防刃仕様。
魔力はドラゴン一億頭分に匹敵する。
自惚れている訳ではなく、事実として負ける要素がない。
「そうだ、残りの二人は何かあるのか?」
「特に情報は流れてきていない。普通に魔法が上手いか魔力が多いか、そのどちらかじゃろ。」
へえ。
まあこっちも似たようなものだが。
「......成る程。理解した。話は以上か?」
「そうじゃ。......絶対に勝つんじゃぞ?」
はいはい。
「まあせいぜい頑張って見せるさ。」
そう言いながら俺達は学園長室を去った。
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