狂科学者式魔法訓練(8)
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「さて、三番、お前は勿論疲れていないよな?」
『......本当にやるんすか?』
「嘘だと思ったか?」
『まあ......所長のことっすし。』
二人の魔力回復を待つついでに俺も稽古を付けてもらおう。
そう剣を構えるハルトにげんなりとした顔で剣を構え直す三番。
「では行くぞ。二人も見ておけ。」
『お手柔らかに頼むっす。』
瞬間、ゴウッと風が吹き、ハルトの姿がかき消える。
次に現れたのは、その遥か上空。
高度数十メートルまで跳ね上がったハルトは口を開く。
「風属性の本質は速さにある。ってことでこんなこともできるわけだ。」
そして空中で上下を入れ替え、まっ逆さまに剣を打ち下ろす。
明らかに重力による落下以上の速さをもって落とされた剣を受け止める三番。
二つの剣が擦れて火花が散る。
『......相変わらずッ出鱈目な力っすねッ!』
しかし三番もまた、人外の膂力をもってそれを弾き返す。
しかしハルトの攻撃は終わらない。
上下が反転した状態のまま空中で停止し、三番の頭上へ猛攻を仕掛ける。
「風属性は速度の概念。落ちる速度を相殺することで落下は止まる。」
しかしまともに学んでいないハルトの剣は隙も多く、その間を縫うように三番も剣を振るい、防ぎきる。
「それを利用するとな、」
そこで言葉を切ったハルトはまたもやかき消える。
次に現れたのは......三番の背後。
「こんなこともできる。」
トンっと指が触れた瞬間、弾き飛ばされるように吹っ飛んでいく三番の端末。
しかし向こうもその頑丈さは伊達ではなく、訓練場の地面に剣を突き立てて減速し、体勢を立て直して再度ハルトとの間合いを詰めていく。
それでもハルトは余裕そうに脇の二人へ解説する。
「だが、」
そして三度目、ハルトが消えた瞬間、爆発が起きた。
否、三番の胴体が吹き飛んだ。
余りの加速にその四肢と首から上を置き去りにして。
もちろん胴体も無事ではない。
中心部は槍で貫かれたかのように穴が開き、四肢の接続部は原型を留めないほど歪に変形している。
「このように......慣性を捩じ伏せるほどの過剰な加速は耐えられないものを破壊する。今の三番のようにな。俺は頑丈だが、お前らは脆い。間違っても今の速さを真似るなよ? 制御をミスって肉片になるぞ。」
「......って、え!? 三番さんだっけ!? 大丈夫かい!?」
目の前で先程まで相手をしてくれていた先生が爆散したことと、それに構わずさらっと解説を入れるハルトに混乱する王子。
「......まあ、攻撃手段としては悪くない。ん? ああ、大丈夫だ。おい三番、起きてるよな?」
そう地べたに転がる頭部に話しかければ、
『は゛い......な゛んとか......て感じっ゛す。』
所々ノイズが走っているが、接続は生きていたようだ。
しかしバッテリーを吹き飛ばしたから持ってあと数秒。
「三番、お前はいつもの仕事に戻れ。残骸は此方で回収する。」
『......。』
ふむ、バッテリーが尽きたか。
まあ良い。
「風属性の活用法、分かったか?」
「そうだね......とても良く分かったよ。」
「うんっ。」
それは重畳。
通信で支部の従業員に回収するよう伝えて、ハルトは剣を構える。
「さて、」
「先生がいなくなったけど、素振りでもするのかい?」
「なに言ってんだ?」
「......え?」
俺の言葉に不思議そうな顔をする王子。
何をそんなに不思議がっている?
「先生役が吹き飛んだからな、次は俺が相手だ。かかってこい。」
「うん......。」
「え?」
「安心しろ。魔法は使わん。」
「いや、だからさ......はあ。」
こうして何処にも安心要素のない訓練が、また始まった。
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