狂科学者式魔法訓練(5)
―――三日目―――
「......と言うわけで今日からは魔法の訓練だけではなく剣の訓練も混ぜていく。異論はないな? まあ無いに決まっているが。」
「......何がというわけなのかわからないし少々強引すぎやしないかい?」
「問題ない。な?」
「いや、十分も」
「うんっ。」
王子はごねるが、ユアはこんなにやる気に満ち溢れている。
この姿勢を見習ってもらいたいものだな。
「今日使用するのはこの剣だ。相手に接触する千分の一秒前に結界を展開し、接触を防ぐので思う存分振るえ。ただし打撲程度はするので振りきる前に止めること。」
今日のためにわざわざ作った逸品の剣を二人に渡し、俺も掴む。
「まさか......。」
「何だ?」
「いや、君も練習するのかい?」
......?
何を言っているんだこいつは?
「もちろんだ。こういうのは継続して動きを最適化するのが一番だからな。」
「いや......君は腕力一つで全てを吹き飛ばせるじゃないか。」
ああ。
そういうこと。
「いや、お前らが訓練している間なにもしないって言うのも暇だしな。ま、案ずるな。しっかり力を押さえる魔道具は着ける。」
最近よくヒビが入って使い物にならなくなるが。
まあ多少の拘束効果はあるだろう。
「......それを聞いてもちっとも安心できないのは僕だけかな?」
「......さあ始めよう。......そうだ、その前に。」
教師は居る方が良いだろう。
『おい。』
『なんでしょう所長?』
『三番って確か剣が上手かったよな?』
『......ちょっと待ってください。』
『所長、御用っすか?』
『おう。今から言う端末に接続しろ。話はその後だ。』
そして支部の方に通信で連絡し、待つこと数分。
「......どうしたんだい?」
「なに、お前らに剣術の先生を連れてきただけだ。外見は少しアレだが、普通の人間と同じように接すればいい。」
「......君は誰を連れてくる気なんだい?」
「お、届いたぞ。おーい、こっちだ。」
数人の従業員が全力で運んできたのは一台の台車と、その上に乗った人間大のケース。
余談だが、最近支部に待機させる分の人員を雇った。
彼らは真っ当な従業員なので実験体ではない。
管理用に雇っていたが......まさかこんなことに使えるとはな。
「ご苦労。この分は給料に加算しておく。」
「「それでは失礼します。」」
ケースを運んできた者達を見送った後、
「おい、出番だぞ。」
カシュンと音を立ててスライドし、開くケースの蓋。
『いや~ホントにこの体は便利っすね。』
そして中から起き上がってくるのは人に似たナニか。
全身を漆黒の装甲で覆われたやけに生き物臭い動きをする人型が立ち上がった。
『で、所長、自分は何をすれば良いっすか?』
「お前、確か死刑囚になったときの罪状は連続殺人だったよな? 剣は得意だろ?」
『所長......自分の暗い過去を堂々と公言するのは勘弁してくれないっすか?』
「そういうわけでお前の持つ技術を今目の前にいる二人に叩き込んでくれ。ついでに俺にもな。」
そう言って後方を指せば、頭部のカメラアイが動き、二人を視認する。
『はあ......え? いや、所長だけは勘弁してくれないっすか? 自分、別に三途の川は見たくないっす。』
「......ほう? 貴様、余程その首から下を捨てたいようだな? どうせなら今予行演習をしておくか?」
『やらせてもらうっす!!』
「痛覚は俺を相手にするときのみ切って良いぞ。」
『あざっす!』
そうそう。
それで良い。
ついでに戦闘時の神経活動データも取っておこう。
後でなにか役に立つかもしれん。
そうして剣術の訓練は始まった。
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