狂科学者、モルモットを飼う。
「パパ~」
「なんだハルト?」
「モルモッ......ペットが欲しい!」
危ない、本音が漏れるところだった。
「......?」
「どうしたの? パパ?」
突然呆けた顔になるアランを訝しげな眼で見るハルト。
「......いや、いつも不思議なことを言っていたハルトが、急に可愛らしいことを言いだしたからびっくりした。」
それはいつもの俺が可愛らしくないと言いたいのか? このラブリーなベビーフェイスを見てそんなことを言える我が父はとうとう視神経が逝かれたのかもしれんな。
ま、それは後でじっくり問い詰めるとして、
「ダメ?」
「......お前ももう二歳だしな......良いだろう。何が飼いたい?」
「人っ......ネズミが欲しいっ!」
興奮しすぎて本音がっ......
そういえば俺二歳だったな。
つい最近おめでとうは言われたが、この世界、一年おきじゃなくて十年おきに祝うんだよな......。
そのせいで自分の年齢なんて記憶の彼方だ。赤ん坊の成長は早いもので、二歳になって背が一メートル弱にまで伸びた。
今回ペットを欲しがった理由はまあ、実験体が欲しかった。つまりモルモット。
俺がしたい研究には麻酔や外科的技術、道具が必要不可欠だ。
ある程度は魔法で代用とはいえ、麻酔の魔法とかは流石にわからん。実物を探すしかない。量も生き物使って研究しないと危ないしな。
そのためにもモルモットの犠牲は必要なことだ。
「ネズミといっても種類は沢山あるぞ?」
「じゃあ......ドブネズミで。」
「ドブネズミ......か?」
「ダメ? ちゃんと世話はするよ?」
実験体に早々死なれては困る。そういう意味で過酷な環境に適応したドブネズミは最適だ。
「......まあ、良いだろう。しっかり世話するんだぞ?」
「うんっ!」
****
次の日には飼育用の檻に入ったドブネズミが届いた。
名前はモルデモート一世。
名前を呼んではいけないあのモルモット君だ。
寿命もあって多分二年以内に死ぬけどな。
生かす技術と殺す技術は紙一重。
だから死ぬかもしれないけど、出来る限り長生きさせてやるからよろしくな?
「ヂュ......ウ」
あれ? 元気ないのか?
安心しろ?
治療はするから。




