狂科学者式魔法訓練(2)
王子からの追及を華麗に受け流しつつ、授業を続けるハルト。
「例えば、そうだな......『炎渦弾』」
そう唱えれば火属性の魔力が渦を巻き、槍状になって射出される。
貫通力重視の炎弾といったところか。
全然魔力を込めていないので的は貫かずに散ったが。
「今の詠唱はたった三単語。それでも意味さえ存在すれば詠唱になる訳だ。」
「......今のは何語だい? 僕の知っているどの言語にも聞こえなかったんだけど。」
「さて、何語だろうな? 意味は......ユアはわかるだろ?」
「うんっ。火を渦状に形態指定して飛ばしたんだよね?」
「そうだ。」
表意文字と表音文字。
前世の漢字と英語を含むラテン系統の言語だ。
二つは同時に使用することで魔法に絶大な親和性を示した。
同時に二言語の意味を思い浮かべることで、魔法陣の条件式は漢字で記述されて極限まで簡略化され、詠唱にラテン系の言語を使うことで早口の詠唱を可能にしている。
すると魔力効率も詠唱速度も手軽に上がるわけだ。
まあ言語自体を身に付けなければいけないが。
基本的に単語さえ覚えていれば良いので難易度は低い。
元々この世界では平仮名と非常に酷似した言語が使われているので漢字の難易度はさらに低いと思われる。
別に詠唱はそのまま漢字の音読みで作っても成り立つが、まあそこは気分だ。
詠唱速度に影響はないしな。
ちなみにユアは研究所で俺がぼちぼち教えていたので漢字は大分知っているし、英語の形容詞や名詞の語彙もそれなりに身に付いている。
「......この言語を交流試合までに完璧にするってことかい?」
「いや、無理だ。」
どんだけ漢字があると思ってんだ?
二千字はある上にそれらを組み合わせた熟語まで考えたらとんでもないことになる。
「お前等には先程も言ったように魔法陣をひたすら書いてもらう。勿論普段の言語でな。その過程で最適な属性と条件式を素早く考えられるようにするのが目標だ。とにかく言葉の一つ一つを吟味し、簡略化することだけ考えろ。」
要は筆算の練習だ。
数をこなせば頭がそういう思考に適応する。
「......では始めるぞ。」
こうしてハルトの授業は始まった。
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