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狂科学者式魔法訓練(1)

 「ハル君っ。おはようっ。」

 「おう。」

 「やあ、今日から色々勉強させてもらうよ。君の魔法を。」


 食堂に来たとたん、示し合わせたかのようにやってくる二名。

 既に日常と化した光景なので、誰も気にしないが。


 「手早く食って訓練場へ向かうぞ。」

 「うんっ。」

 「......もう少しゆっくり食べさせてくれないかい?」

 

 そして朝食を五分で済ませ、三人で指定された訓練場へ向かうのであった。


 **** 


 訓練場に来て早速、ハルトは地面を盛り上げて簡易的な椅子を三つ作成、二人に座るよう促し、自分も座った。 


 「さて、今日は座学だ。」

 「......? 僕らにも魔法の知識はあるよ? 君が書いたんでしょ? あの教科書。」

 「『強力な魔法の使用法』か? あれは一般大衆向けの基礎だ。あの内容程度、調べれば誰でも分かる。今日やるのは......。」


 先の言葉に期待してか、ごくりと喉をならす王子。

 安心しろ。

 これはとてつもなく重要な訓練だ。

 その名も......




 「お絵描きだ。」


 「......え?」

 「お絵かき?」

 

 その予想外の内容に唖然とする二名。

 だがハルトの話は止まらない。


 「ユア、お前には教えたと思うが、魔法を使う上でもっとも大事なことは何だ?」

 「えっと......論理的な詠唱の構成? だっけ?」

 「もう一つ。」

 「ん~......最適な属性の決定と明確なイメージ?」


 「そうだ。二人には今日はその二点をひたすら練習してもらう。俺の出したお題通りの効果を発揮する魔法陣を延々と書いてもらうからな。もちろん学園の授業で出てきたものは一切無い。」


 「成る程......確かに授業では魔法陣の暗記はあっても創作はなかったよね。」

 「状況に応じて最適な魔法陣を瞬時に作り出す訓練だ。何、案ずるな。意外と簡単な作業だからな。その前にひとつ確認テストをするが。」


 「?」

 「......なんだい?」

 「ほれ。」


 と普段眼球内に投影しているディスプレイを拡大して外に出す。

 そしてオーソドックスな魔法陣をいくつか表示する。


 簡易版ホワイトボードだ。

 「では問題だ......魔法陣の属性指定と条件式の記述される部位を答えろ。簡単だぞ?」

 「はいっ。」

 「え?」

 ふむ、ユアはともかく、王子はなんだそりゃって顔だな。


 「ではユア、言ってみろ。」

 「えっと......周りの三角の中が属性指定で真ん中の下の段が条件式で、上の段が思念介入式!」

 「大正解だ。では解説といこう。まず六芒星の六つの正三角形。これ等は属性指定をするために使用する属性に対応する記号が入る。順番は余り関係ないが、魔法の発動行程に沿った順番に並べることで魔力効率や威力が少し上がるぞ。真ん中には具体的な魔法の条件......形態や威力、範囲や効果などが記述される。そして上の段には記述された条件が足りない場合に術者の思念から補うための文字が刻まれているが......魔法陣の条件式が完璧であれば無くても発動に支障をきたさないどころかこれも無駄が省けて効率が上がる。また術者のイメージが大きく関わってくるため、威力が不安定になりやすい。ま、俺は基本的に使わんから省いている。」

 ふう。

 しゃべるって疲れるな。

 喉がからからになってしまった。


 「......でも魔法陣の詳しい内容って魔道具作るとき以外要らないと思うんだけど? 陣自体は詠唱で形作られる訳だしさ。」

 だから今の説明って無駄じゃないのかい?

 と疑問を口に出す王子。

 だがそれは間違いだ。



 「無駄どころか非常に大事だ。これが最高効率の詠唱を作り出す土台となるのだからな。」

 「......? 詠唱って詩的で様々な意味を短くまとめた方が効率がいいんじゃないのかい?」


 学園ではそう習ったけど。

 とまたもや疑問を漏らす王子。


 間違いではない。

 詠唱はシンプルで短ければ短いほど魔力効率が上がるからな。

 詩的な表現を用いて条件を圧縮というのは利にかなっている。


 だが、

 その方法には詩の才能が大きく関わってしまう。

 それでは意味がない。

 誰でも使える汎用性があってこそ真の魔法理論だ。


 「お前に詩の才能があるなら別に良いが、あるのか?」

 「いや、ないけどね......。」

 「じゃあ俺のやり方の方が適正だ。」

 「へえ? そうなんだ。」

 

 「何はともあれ、まずは手本だ。俺は基本的に詠唱なんぞしないが。」

 「何で?」 

 「俺が詠唱しているところ、見たことあるか?」

 「そういえば......無いね。ユア君は見たことないかい?」

 「いえ、無いです。でも......ハル君は凄いから。」

 

 ユア、それは理由としてどうなんだ?


 「いま説明しているこの映像だって幻影魔法だ。俺はこれを映したとき詠唱していたか?」



 「確かに......してなかった気がするね。何でだい?」

 「それはな......。」




 王子がごくりと唾を飲む。

 俺の秘密がようやくわかると期待しているんだろう。

 だが、


 「秘密だ。」

 言うと同時に王子がこけた。

 なかなか面白い反応をする。

 今のは保存しておこう。


 「......ちなみに......何でだい?」

 「いや、別に知らんでも詠唱はできるし。」

 魔法生物といってもどうせ理解できんだろ。

 

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