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狂科学者は付きまとわれる

 「ハル君、おはよー。」

 「ハルトさん。おはようございます!」

 

 朝食を食いに来たらいつもやって来るユアが余計な人物連れてきてしまった。

 なんて考えていると、

 「......やあ、おはよう。ところでフィーとはどういう関係なのか勿論教えてもらえるよね?」


 要らん奴が増殖した。

 てか王女の愛称はフィーというのか。

 

 いや何だこの状況?


 両隣にはこの国の王女様と公爵家令嬢。

 目の前には目が座っているがイケメン顔の次期国王。


 そしてその三人の視線を一身に受ける平民。



 ......ふむ、大分凄まじい人物構成だな。

 周囲の視線をがっつり掴んで離さないぞ。


 殆ど全員飯を食いに来たはずなのに手が止まっている。

 会話も止まり、静まりかえる食堂。

 そこに響くのはせっせとハルトに話しかける三人の声と食堂のおばちゃんが時折発する威勢の良い声だけ。


 ガタリ

 びくっ。と、ふとした物音にも過敏に反応する生徒諸君。

 何の音かって?

 俺が席を立った音だ。

 いちいち相手をするのも面倒くさいので黙々と静かに食っていたのだ。


 「わっ!? ハル君、待って。」

 そんな俺に気付き、優雅さを損なわない程度に早食いし始めるユア。

 

 「授業でまた御逢いしましょう、ハルトさん。」

 「君は本当に食べるのが速いね。もう少しゆっくりしてもいいんじゃないかい? ......ってあれ?」


 王族兄弟も何やら勝手なことを言っているが、王子が言い切る頃には既にハルトは居なくなっていた。



 ****


 「ふう......」

 教室の席に座り、踏ん反り返りながら一人の時間を楽しむハルト。


 まだ授業まで一時間はあるので、食休みがてら義肢のテンプレートを試作する。

 

 身代わり人形を通し、慣れた手つきで骨格に人工筋肉や神経を取り付けていく。

 作業用と生活用等用途に合わせて構成を変えて一セットずつ作っていく。

 まあ違いといっても作業用の方は若干出力を上げ、耐久性重視で装甲をつけてある一方、生活用は出力を若干下げ、外装の質感を生身に似せてあるだけだが。


 人によって色は違うだろうし、外装はオーダーメイドにした方が良さそうだな。 

 少々高いが、こちらは貴族に売るつもりなので問題ない。

 別に外装がなくても動作には支障ないからな。



 ところで、

 「俺の目がそんなに面白いか? ユア?」

 「うん、綺麗。」


 先程からユアが俺の目を覗き込んでくるのだが......


 「まだ授業は始まらないぞ?」

 「ハル君がいるから。」


 ......? 不思議なやつだな。

 こんな変人の何が良いのやら。


 「呼吸が荒いようだが走ってきたのか?」

 「えっ? あっ。う......うん!」


 ?

 まあ良いか。

 体温を計測しても熱は無さげだし。


 「俺の目を見るのは自由だが、授業が始まるまで邪魔しないでくれ。」

 「うんっ!」


 さて、作業に戻るか。


 ハルトは視界一杯に画面を展開し、ユアからの視線を無視して作業を再開するのであった。


 

 

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