狂科学者の返答
「......ユア、そろそろ静かにしろ。俺も仕事があるのだ。」
「......。わかった。」
そうユアを宥めた俺は思い出した。
そういや王女が来てたんだったな......と。
首を90度真横に捻ればそこには表情筋をプルプルさせながらなんとか笑顔を保っている王女がいた。
「......幼馴染みとのお話は済みましたか?」
「いや、そもそも俺は忙しいんだ。忘れていた。で、何回も言うが用件を聞かせてもらおう。」
「用件はですね......お、お友達になってください!!」
ああ。
成る程。
よくわかった。
全くもって意味がわからんということがな。
何をどうしたらそんな頼みが出てくる?
理解が不能すぎて義手製作の手が止まってしまった。
「俺のような人付き合いの悪い奴と友人になったところで利益があるどころかマイナスだろう。それなのになぜお前は俺の友人になろうとする?」
「ハル君っ! 王女様には一応敬意を払ってよね!」
「断る。」
「いえ、それは良いんですが......」
もしや、
「国王......お前の父親から俺と友好的な関係を築けとでも言われたか?」
こいつが王女であることを考えて、これか?
あの国王は俺の開発したものをえらく気に入っていたようだし。
ハルトは公爵の話を完全に忘れていた。
このままでは一生向こうからの好意に気付かないかもしれない。
「まあ、それもありますけど......。」
「ならやめておけ。俺の平穏のために。」
ろくに聞かずにバッサリと切り捨てるハルト。
「でも......。」
何か言いたげに、だが少し躊躇して視線を泳がす王女。
「......個人的にハルトさん......あなたが......」
俺が?
王女はそこで一呼吸おいて、
「......好きなんですッ!」
ハルトに告白した。
「あ、そう......」
ハルトの脳味噌は瞬時に再起動、突然の告白に含まれた意味の解釈と真偽の検証を始める。
目の前のこいつは今、俺へ好意を伝えてきた。
発言した瞬間の緊張の度合いは心拍数から測定するに結構高め。
おまけにこいつは人見知りである。
つまり相当な勇気を振り絞って告白してきた。
つまり本気である。
かつ友人としてのライクではなく男女間でのラブに相当する意味を含んでいる模様。
あー
そういえば。
公爵がそんなこと言ってたような気もしなくもないな。
確か人見知りだが恋心を抱いている俺は安心できて大丈夫?
だから会話がまともなのか?
なるほどなるほど。
一国の王女から告白される平民。
物語にありそうな展開だな。
物語ではそのまま受けてハッピーエンド。
めでたしめでたし。
しかし現実で受けたら待っているのは逃げられない義務の山。
ならば答えは当然。
「......気持ちはよくわかった。てことでお休み。」
聞かなかったことにして寝る。
これが言質を取られない最善策だ。
斜め上の返答に固まる二名を尻目に、ハルトはベッドに横たわるのであった。
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