狂科学者の愚痴
「二術院」
魔法と生物学、二つの技術を駆使し、魔法のみでは困難な治療も可能とする施設。
ハルトの作ったそれは順調に業務を開始した。
ニコラ商会の伝を使って行われた宣伝と、ドラゴンスレイヤーとして著名なレント叔父による口コミが絶大な効果を発揮し、病人や金のある重傷患者が集まってきたのだ。
千レアも出せば大抵の病は治り、十万レアあればある程度潰れた四肢も復元できる。百万レア出せば欠損部に自由自在に動く義肢も特注で作られる。
致死的な毒も意識を失う前に担ぎ込めば助かる。
―――死んだ人でも生き返らせられる―――
そんな根も葉もない噂すら飛び交うほどに二術院は成果を挙げていた。
......従業員に首から下が人工物の者がいる時点で本当に根がないかと言われるとそうでもないが。
普通首を切ったらどんな豪傑でも死ぬのだから。
特に冒険者たちからの反響が大きかった。
レントという身近な存在がうちの義手を着けて普通に活動していたのが大きかったのだろう。
まあ普通のに比べて叔父さんのは圧倒的に性能が違うんだが。
何せ竜殺しの義手だ。
普通の義手にあんなもん付けられん。
俺が表に出しているのは本人の筋力と同出力を出せる義手のみ。
それも物理的に神経接続したやつだ。
魔法生物なんて使わん。
代わりといってはなんだがメンテナンスは数ヵ月に一度数百レアで請け負っている。
我ながら、なかなか良心的な価格設定だと思う。
神経接続型の義手を公開したばっかりの頃は錬金術師や職人達がわんさか群がってきたが、最近は大分落ち着いてきている。
それでも時折強引に買い取ろうとしてくる者はいるが、そういう輩には丁重にお帰り願っている。
どうとは言わんが。
それはもう懇切丁寧にな。
色々文句をつけてくる奴もお断りだ。
といってもなんでもかんでもさようならではなくしっかりとした理由がある奴だけな。
いちいち偉そうな奴だと粗悪品ができる。
逆に気さくな奴には出来の良い義手が作られる。
そもそも体に触んなって奴は寸法の取りようがないので作れない。
前提の手術もできないのでさようならというわけだ。
前世だったら誰もが「えぇ゛!?」と思うような状況や発言が普通にある。
まだモラルが発達していないのだろう。
いい加減俺と友好的にしないと良いものができないと分かってもらいたいものだな。
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