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閑話、狂科学者の朝。


 早朝、ハルトはベッドからもぞもぞと起きだす。

 まだ外は真っ暗で、ハルト以外は誰も起きていない。


 『超回復』の能力のおかげでハルトは大した睡眠時間を必要としていないのだ。


 「ふあ~あ」

 小さくあくびをしながら、軽く全身を動かして覚醒したハルトは、体内にある魔力をすべて放出、空にした状態を保ちながらおもむろに片手を床につき、足と胴体をまっすぐ伸ばす。


 そのまま腕のみを曲げて、伸ばす。

 ふんっふんっふんっ

 と呼吸をしながら上下する背中。


 

 ハルトは片手腕立て伏せをしていた。


 一歳児が片手腕立てをしている......それだけでも騒ぎになりそうなのにもかかわらず、50回を超えたあたりで今度は立ち上がり、片足でスクワットを始める。


 それも50回くらいで終えると、ベッドに戻って放出して空になった魔力が回復するのを待ち、ついでに休憩する。


 「よし。」

 一時間ほどで魔力が完全に回復したハルトは石板を引っ張り出して魔法陣を刻む練習を始める。


 手元を明るくするのは魔力で火を灯す自作の照明魔道具。


 刻み終わった石板は作業台の隣に隣接した加工用の魔道具に差し込まれ、ただの石板へと戻る。

 ハルトが保存しようと思った魔法陣は、別の魔道具に差し込まれて小さな鉄板に自動で圧縮転写された後、魔石で保存処理をされる。


 いちいち魔法陣を圧縮して転写するのが面倒くさくなったハルト渾身の一品である。


 物体の加工から魔法陣の圧縮、転写、保存、消去、編集、何でもござれな工作台だ。





 ......そこで小一時間ほど魔法陣の研究をしていると、


 「ハルト、ごはんよ~。」

 と扉の向こうからミレアが呼んでくる。

 「は~い。」

 

 元気に返事をしたハルトは、すぐさまドアをジャンプしてオープン、使用人たちの視線を浴びながら両親の待つ食堂へ向かった。




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