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狂科学者の施設案内

 「本当に中を見ますか?」


 その問いに、王が自ら答える。

 「そのために来たのだ。今さら見ないなどとは言えんよ。」


 ふむ......

 ハルトは一瞬目を細めて瞼の裏に投影された情報に目を通す。

 施設内に配置された各種センサーから国王達の心音や体温、生体電位を測定したデータだ。

 全員微妙な緊張状態にあるようだな。

 体内の生体電位が混沌としていて上手く読み取れない。


 心音は......


 ほう。

 さすがは国王といったところか。

 正常値の範囲内に収まっている。

 取り巻きの心拍数は速いがな。


 なかなか胆が座っている。

 そうでなければそもそもとしてまともな政治などできないだろうが。


 それでも体温の上昇は見られる......か。


 「ではどうぞ。むやみやたらに置いてある物に触れないよう注意して存分に視察してください。質問は受け付けます。」


 「説明は?」

 「聞かれれば答えますが、聞かれなかったら答えません。一日程度では到底説明しきれる量でもないので。」

 

 国王に全体の説明を求められるが、やんわりと拒否する。

 本当にこの研究所を説明しようとすれば二日はかかる。

 流石の国王もそこまで暇ではないだろう。


 「ふむ......まあ、そういうことにしておこう。......ところでこの宝石に閉じ込められた物は何だ?」

 何やら含みのある独り言とともに、国王が部屋に飾ってあるモルデモート一世のミイラに興味を示した。


 「それはモルデモート一世と言う......この研究所が始まる前から私の実験を受けてきた優秀なドブネズミです。結構長生きしましたが数年前に死にましたので記念に魔石で被い、防腐処置を施して飾っているわけです。」


 いわばこの研究所の実験動物の初代というわけだ。

 数十世代ほどこいつよりも先に逝ったが。

 

 「ほう、ではこっちは何だ? 見たところ人の腕の形をしているが......。」

 今度はがらくたに目を向ける国王。


 「それはドラゴンスレイヤーであり、叔父でもあるレント殿の古い義手です。」

 「義手?」

 「はい、まあこんな風にすると自由に動かせます。」

 

 魔法生物から接続して、俺の運動神経とリンクすれば、生きているかの如く動き出す義手。


 「「なっ!?」」

 国王の護衛や付いてきた貴族達が声をあげる。

 「こ、これは......」

 「そんな、こんな高度な義手があるなんて聞いたことがないぞ!?」

 「おい、貴様、これを私が」

 「静まれ。」

 国王の一声で口をつぐむ一同。

 

 そしてハルトに向き直り、

 「これはお前が作ったのか?」

 「はい。」

 「どうやって?」

 「頑張って。」

 「何の為に?」

 「先程いった通り右腕を失ったドラゴンスレイヤーの叔父のために。」

 「ここでか?」

 「『この義手』はここで。」


 ハルトが含みのある返答をすると、

 「......? どう言うことだ?」

 「いや、この研究所ができる前に最初の義手を作ったので。」

 「本当か!?」

 その返しに心から驚く国王。 

 顔も先程までの鉄仮面ではなくなり、ちゃんと驚いている。


 ドラゴンスレイヤーのレントが右腕を失ったのは六年程前。

 この研究所ができたのも同じ頃。

 つまりハルトは三、四歳の時点で世界中の錬金術師や職人を超える加工技術と知識を保有していたと言うことに他ならない。


 そんな鬼才がこれまで余り目立たずにかつ大胆に研究を行っていた。

 何かの間違いでその才能が隣国へ流れていったかもしれない。

 それだけで国家レベルの損失だ。

 その才能を何とか今見付けられた。

 

 最初はただの時折居る魔力が強くて多少頭の良いだけの天才だと思っていた。

 しかし改めて間近で観察してみればその目には大人も顔負けの深い知性が伺え、狂気的な実験すらこなす行動力もあり、国王の前でも物怖じしない胆力すら兼ね備えている。

 

 首を切られた者を蘇生させたことも加味すれば、その異常性はさらに際立つ。


 多少異常だし、

 多少不遜だが、

 是非とも欲しい人材。


 この国のためにも、絶対に確保すべきだ。

 国王はそう決心した。



 そしてハルトはというと、国王から顔を逸らしていた。

 良い年のおっさんに見つめられ、気まずくなったのだ。


 国家レベルで監禁されそうになっていることにも気付かずに。


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